[風をとらえる] 東京五輪・パラ 世界競争へ備えの契機

 東京五輪・パラリンピックの開幕が半年後に迫る。食のもてなしで大会を盛り上げ、日本産の農畜産物や食品が品質に加え安全性でも誇れることを証明したい。世界との競争を見据え、農業生産工程管理(GAP)取得など日本の取り組みを世界標準に適合させる機運を高め、大会後につなげる視点が重要だ。

 大会組織委員会が定めた飲食提供の基本戦略には、選手が良好なコンディションを維持できるよう衛生面や栄養面への配慮を重点的に盛り込んだ。期間は夏場で、農産物の調達は食中毒防止など安全性確保が最優先となりGAP認証が要件になる。

 大会を「食」で盛り上げようと、アジアGAPやJGAPの認証を取得した国内農場数は4735(2019年3月末現在)と5年前の2倍以上。大会での日本産の必要量は米などの主食が135トン、野菜は215トンとなるが、食材供給の産地の意向はいずれも100倍前後と旺盛だ。

 価格やロットを含め要件をクリアすると、選手村で日本食を振る舞うカジュアルダイニング向けに産地は食材を供給できる。過去の大会を基に想定される提供食数は1日最大3000。輸入品を多く使うメインダイニング(同4万5000食)と比べ少なく、大会のルールで食材には県・市町村単位の産地名と品目しか表示できないことが惜しまれる。「コシヒカリ」などもブランド名に該当するため「米」としか表示できない。産地が大会後のPR戦略にどう生かすのか詰める必要がある。

 前向きに捉えたい。200を超える国・地域が参加する30日の期間中、大会関係者と観客合わせて1000万人以上が訪れるとされる。事前合宿で地方に長期滞在する代表チームも多い。昨年11月現在で、464自治体が計156国・地域のホストタウンに名乗りを上げている。台湾の選手団を受け入れる北海道士別市では、地元のJA北ひびきが青果物などでGAPの取得を進めてきた。食文化を発信して地域のファンを世界に広げ、訪日外国人(インバウンド)を呼び込む契機にしたい。

 盛り上がりを大会後に生かす視点が要る。飲食提供の基本戦略は持続可能性が旗印となる。GAP取得を、生産組織や農地を継続的に維持し、食品の安全性の証明と農作業の安全性の向上につなげる方策とすべきだ。

 国際化が否が応にも進む中、日本でも21年6月に危害分析重要管理点(HACCP)が完全義務化となる。大手メーカーや小売りと産地が取引する際に、トレーサビリティー(生産・流通履歴を追跡する仕組み)確保が条件になるケースも増えた。

 国内消費が縮小する中で海外に販路を開拓する時も同様だ。宗教上の制約や食習慣の違いなど食文化の多様性や、食品衛生管理基準といった現地市場の特性を踏まえた対応が必要だ。

 大会は、世界と戦える水準に日本産を高める加速器となる。
 

おすすめ記事

論説の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは