[風をとらえる] 気候変動と農業 温暖化防止へ貢献急げ

 地球温暖化による異常気象が世界各地で発生している。このままでは食料生産は一層不安定になるだろう。安定した食料供給を担い、地球環境にも優しい農業に世界の期待が高まる。

 異常気象をもたらす地球温暖化を食い止めることが人類に課せられた今世紀最大の課題である。削減できなければ、今世紀末の平均気温は産業革命前と比べ最大3・9度も上がる。オーストラリアで干ばつに伴う深刻な山火事が続いている他、世界各地で洪水や高温が相次いでいる。台風で昨秋大きな被害を受けた日本も今冬は極端に雪が少なく、春先の水不足が懸念されるほどだ。

 温室効果ガス削減に向けた「パリ協定」の運用が今年から始まる。期待を集めるのが農林業だ。温室効果ガスを吸収する機能が備わっている。森林は二酸化炭素(CO2)を吸収し、農業土壌は炭素(C)を貯蔵する。森林を整備し、堆肥や有機物資材を投入する環境に優しい農業ができれば、温室効果ガスの排出量削減に貢献できる。生産性を向上させながらこうした農業技術が完成し途上国にも移転できれば、「収奪農業」にブレーキをかけることもできるはずだ。

 農山村地域にある小水力や風力、太陽光、バイオマスでの発電を利用した農業は、未来型産業にもなるだろう。世界中で温室効果ガス削減につながる農業の研究も始まった。温室効果ガスである牛のげっぷを抑えるため、海藻「カギケノリ」を餌に混ぜる技術開発が進む。消化器官内メタン発酵の少ない羊や牛系統の育種研究も進む。

 昨年末に開かれた地球温暖化対策を話し合う「COP25」は、技術支援が温室効果ガスの削減量にカウントできるルールを決められなかったが、粘り強く合意をつくる必要がある。

 6割以上を海外に頼る日本の食料供給は今後一層安定さを欠くだろう。政府は環境に優しい農業の普及に本格的に取り組み、食料自給率向上を目指すべきだ。温暖化に強い品種の開発を急ぐ農研機構は米の「にこまる」や桃の「さくひめ」などの開発に成功した。海外から入手した遺伝資源を活用した品種改良にも期待が高まる。

 生産現場での温暖化対応も急がなければならない。水稲の最高分けつ期を中心に行われる中干し期間を1週間程度延長すれば、水田から発生する温室効果ガスのメタン排出量を30%削減できる。こうした栽培技術の普及を急ぐべきだ。

 農業由来の温室効果ガスは世界全体の約1割を占める。日本は、大量の化石燃料と化学物質に頼る大規模農業より、地球環境に優しい家族農業で世界に貢献すべきである。生産の4割を占める中山間地域は、自然環境に恵まれ温暖化を防止する資源の宝庫でもある。その資源を生かすことができる家族農業こそが地球を救い、人類を救う。その「風」が吹き始めている。

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