しくしくとうずくような痛みがたまらない

 しくしくとうずくような痛みがたまらない。昔から虫歯は身近な病だった▼平安時代の清少納言は『枕草子』で、色白で髪がきれいな二十歳前の女性がもがく様を書いた。「歯を、いみじく病み惑ひて、額髪もしとどに、泣き濡(ぬ)らし、髪の、乱れ掛かるも知らず、面、赤くて、押さへ居たる」(ちくま学芸文庫)。「しとど」はびっしょり。相当痛かったのだろう。同時代の紫式部も『源氏物語』で、「御歯のすこし朽ちて、口の内黒みて」と描いた。口の中が黒いのはかわいいとされた▼何年かぶりに虫歯治療のついでに歯石を取ってもらった。「がりがり」と歯が折れるのではないかと心配になるほどの力で削る。「このままほっておくと歯周病になって歯が抜けてしまう。健康のはははは(母は歯)です」。言葉遊びのような歯科医の忠告に、80歳まで20本の歯を残す「8020(はちまるにいまる)運動」の実践を誓う▼きょうは鏡開き。飾った餅を雑煮や汁粉にして味わう日である。「歯固め」の儀式に由来する。歯は齢(よわい)に通じ、長寿を祈るという意味があった。刃物で切ることを忌み、手かつちで割るのがしきたり。鏡割りともいうが、「開き」とめでたい言葉を使ったのは正月ならではの表現▼「歯固の歯一枚もなかりけり」(一茶)では困る。どうぞ歯は大切に。
 

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