[未来人材] 30歳。生花店から転身、秘境で食用バラ栽培 放棄地で産地化挑戦 久山秋星さん 和歌山県古座川町

食用バラを地域の特産品にしたい」と話す久山さん(和歌山県古座川町で)

 町の96%が山林に覆われた紀伊半島の秘境、和歌山県古座川町。山あいの耕作放棄地を開墾し、食用バラの産地化に取り組む移住者がいる。花の「売り手」から「作り手」に転身した久山秋星さん(30)だ。化学肥料・農薬に頼らない農法にこだわり、栽培体系を確立。「生産・販売を軌道に乗せ、食用バラを地域の特産品に育てたい」と力を込める。

 町で食用バラの生産・販売を手掛ける「あがらと」で、農場の管理を担う「ファームディレクター」を務める。同社は現在、約70アールの農地に9棟のハウスを設置し、2500株の食用バラを栽培。食用バラの生産規模は国内有数を誇る。

 「元々は花を売る側の人間だった」。高校1年で始めた生花店でのアルバイトがきっかけで「植物や自然への関心が高かった」と振り返る。高校卒業後は京都市の生花店で働き、花の世界に本格的にのめりこんだ。

 転機は農薬アレルギーで花を買うことができなかった来店者との出会いだ。「本来、植物は自然に育つ。どうして農業でそれができないのか」。化学肥料・農薬に頼らない農業に興味がわいた。

 そんな時に出会ったのが、後に「あがらと」の代表となる土井新悟さん(44)だった。同町で環境に配慮した農業に取り組む計画を聞き、共感した。2017年3月に土井さんらと同社を立ち上げ、就農した。

 久山さんたっての希望で食用バラに取り組むことになった。「生花店出身なので花を栽培したい」「化学肥料・農薬を使わずに栽培するので、消費者に食べてほしい」。二つの条件を満たすのが食用バラだった。

 まず、人の背丈ほどに草木が伸びた耕作放棄地を開墾することから始まった。環境に配慮して土に返る竹でハウスを自作したが、台風で倒壊が相次いだ。害虫が発生し、全滅するハウスも出た。その度に竹の組み方や植物由来の防虫液などの研究を重ねた。19年、初めて生産が軌道に乗った。

 同社は同じ年、バラを使ったジャムや茶など加工品の販売に乗り出した。「バラを食べる“新しい感覚”が好評」と久山さん。食用バラを古座川町の目玉にする夢が走りだした。(北坂公紀)
 

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