[風をとらえる] 暮らしの安全保障 仕組みを地域ぐるみで

 医療・福祉のサービス、子育てや外出・生活の支援、災害発生時のサポート──。これらを受けられるかどうかで地域格差が広がっている。生活の質や“命”に格差があってはならない。地域住民から団体、企業、行政まで国を挙げての「全世代的暮らしの安全保障」の仕組みづくりが急ぎ必要だ。

 国連が提唱し、実践してきた「人間の安全保障」という考え方がある。国をつくる最小単位の個人に着目し、安全を脅かすものから一人一人を守り、また、誰もが公平に教育を受け個々の能力を高められるようにするのが狙いだ。これが国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」と結び付き、「誰一人取り残さない」社会づくりに向けた行動理念の両輪とされる。

 「人間の安全保障」で、課題のある分野として挙げているのが、①経済②食料③健康④環境⑤個人の生き方⑥地域社会⑦政治──だ。日本では全国的な人口減少や高齢化で、特に健康では医療・福祉の充実、環境では大規模災害への対応、地域社会では生活などの支援が、世代や地域を問わず喫緊に解決すべき暮らしの最重要課題だろう。

 しかし、地域医療を担う病院を再編・統合しようとする国の動きや、医師の偏在、公共交通機関や買い物ができる店の撤退、多くの地域で災害復旧が進んでいないといった現実がある。国や地方自治体の体制整備は言うまでもないが、JAやNPO法人、企業、住民がそれぞれ当事者意識を持ち連携して課題解決に当たることが必要だ。

 課題山積だが、新たな兆しといえるのが、生活の課題を住民主体で解決しようとする動きだ。地域の問題を「自分事」として捉え、暮らしの安全・安心の仕組みを自らつくりだそうとする地域運営組織などの活動は極めて重要となる。

 まずは「地域の一番の課題」を聞き取り、複雑に絡み合う他の課題も解きほぐしながら、一つ一つ解決していくしかない。活動の実践地域では、運営手法を共有しながら、地域特性に合わせて常に試行錯誤が続く。

 全労済協会の調査報告書(2018年版)によると、「社会問題や暮らしの向上に熱心な団体は」という設問で、「協同組合」と答えた人はわずか5・8%。暮らしの安全・安心を地域の中で長く守ってきたJAの活動や事業は、正しく評価されていない。日本協同組合連携機構(JCA)は、『1時間でよくわかるSDGsと協同組合』を監修した背景に、この認知度の低さがあると説明する。

 「誰一人取り残さない」というSDGsの行動理念と、「一人は万人のために、万人は一人のために」という協同組合精神は非常に近い。今こそJAは、活動・事業を広く発信すべきだ。暮らしの安全・安心は、持続可能な地域であることによって保障される。関係団体などと連携した地域づくりへの一層積極的な参画にも期待したい。
 

おすすめ記事

論説の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは