物流問題の克服 小売り含め業界一丸で

 輸送費が上がりトラックの手配もしにくいなど、農畜産物の物流が揺らいでいる。深刻なドライバー不足と人件費の高騰が背景にある。輸送業者の負担軽減といった産地の取り組みだけでは克服できない課題だ。コストの増加を反映した価格形成も視野に、小売り・実需を含めて業界が連携して対応すべきだ。

 物流の厳しさは、日本農業新聞の取材や調査から読み取れる。企画「ゆらぐ基~広がる危機」で、トラックドライバー不足を取り上げた。青果物はトラックの荷台に直接荷物を載せる「じか置き」が多く荷降ろしの負担が大きいため若手のなり手が少ない実態などを報告した。

 象徴的だったのが「産地と市場が変わらなければ、5年以内に九州から関東へ荷を運べなくなる」との九州のトラック業者代表の発言。手塩にかけて育てた農畜産物が消費者に届かない異常事態が見込まれるという。

 本紙が毎年行う「農畜産物トレンド調査」でも浮き彫りになった。2020年の販売キーワードを流通業者に聞いたところ、今回の調査で新たに加えた「物流」が1位となった。コスト上昇分を産地、実需でどう負担するかに関心が集まり、「業界の垣根を越えた対応が必要」(花き卸)と危機感は強い。

 物流問題に改善の兆しは見えない。全日本トラック協会が会員社に尋ねた「労働力の不足感」の調査(19年7~9月)では、「不足」「やや不足」の割合が7割を占めた。近年、ドライバー不足を感じる企業の割合は高止まり傾向で、将来見通しも不足するとの回答が多い。

 業界関係者は既に対応策の検討に着手した。昨年11月に農水、国土交通、経済産業の3省と地方自治体、JA全農などの発荷主、青果卸などの着荷主、物流関係団体で構成する「食品流通合理化検討会」が立ち上がった。課題解決には、発荷主、物流業界、着荷主など幅広い関係者の協力が必要なため、業界横断で議論する。年度末までに方策をまとめる予定だ。実効性のある提言に期待したい。

 産地も動きだしている。JA宮崎経済連は、選果場で集めた青果物の一部を、予冷庫で一度保存し翌日出荷するようにした。出荷量が前日確定するため業者はトラックの手配がしやすく、積み込み時間も確保しやすくなった。収穫から市場に届くまでの日数が1日伸び、生産者の反発もあったが、予冷した方が鮮度維持できること、輸送業者が厳しい状況であることを担当者が根気強く説明し、理解を得たという。

 輸送手段を鉄道や船舶に切り替える「モーダルシフト」の推進や、積み降ろし時間の削減が見込める統一パレットを活用する動きも一部で始まっている。

 青果物輸送は産地や流通業者だけでなく、消費地の実需者や消費者にも影響する国民的な課題だ。農畜産物の安定供給に向け、業界一丸で知恵を出し合い協力する体制が求められる。
 

おすすめ記事

論説の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは