地方の2020年代 にぎやかな過疎期待 明治大学教授 小田切徳美

小田切徳美氏

 今年から地方創生の第2期対策がスタートする。6年前に鳴り物入りで始まった地方創生に対する世間の関心は、明らかに薄らいでいる。しかし、国の新しい総合戦略に変化があることは、もっと知られてよい。筆者は、それを「人口から人材へのシフト」と捉えている。
 

高校魅力化が鍵


 誤解されがちであるが、地方創生の正式名称である「まち・ひと・しごと創生」の「ひと」は、人口ではなく人材を指している。地方創生法でも、「ひと」とは「地域社会を担う個性豊かで多様な人材の確保」と明記されている。この人材を巡り、新総合戦略で強調されているのは、「関係人口」である。農山村に多様な貢献をしたいと行動する都市住民は、人口にはカウントされないが地域を支える重要な人材である。

 それに加えて、高校の魅力化も重視されている。そこでは、地域と高校を結び、地域課題の解決のための学習が本格的に行われようとしている。これが実施されることにより、高校時代には無関心になりがちであった地元の課題や可能性が彼らの視野に入ってくることになろう。高校生も地域のネットワークに接続され、その後、彼らが都市からUターンする時の足掛かりができる可能性もある。

 この他、公民館の再評価なども行われており、いろいろな形で、人材育成に政策的なドライブをかけようとしている。つまり、「人口減・人材増」が新たな目標と解釈できる。注目すべきは、実際に、それを実現しつつある農山村が生まれていることであり、「にぎやかな過疎」の形成と言える。統計データでは、自然減少が著しいために、人口縮小トレンドはむしろ加速化している。それにもかかわらず、小さいながら、新たな動きがたくさん起こり、なにか「がやがや」している雰囲気が感じられる地域の形成である。
 

「低密度」支援を


 そのプレーヤーは、地元で活動する地域づくり人材のみでなく、「何か関われないか」と貢献する場所を探す関係人口や国連の持続可能な開発目標(SDGs)を意識して接近する民間企業も動いている。さらに、このにぎわいに移住者も引きつけられている。これらの多彩なプレーヤーが交錯するのが「にぎやかな過疎」である。その結果、一部では、人口減少下でも、人が人を呼ぶ、しごとがしごとを創るという好循環も生まれている。

 これは、農山村だけでなく、中小都市を含めた、日本の地方の在り方を示唆している。人口減少が進み、国土全体で人口低密度化する中で、人々が生き抜く「低密度居住地域」としての新しい仕組みが、そこで開発され、提案されているからである。

 もちろん、それを実現するには課題が多く、政策的サポートは欠かせない。だからこそ、農村政策や地方創生が、ぶれることなく持続的でなくてはならない。そうした中で、今から始まる2020年代の10年間が、「にぎやかな過疎」創生の実践期となることを期待したい。

 おだぎり・とくみ 1959年神奈川県生まれ。博士(農学)。東京大学農学部助教授などを経て2006年から現職。高知大学客員教授。専門は農政学、農村政策論。日本学術会議会員、日本地域政策学会会長。『農山村からの地方創生』(共著)など著書多数。
 

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