台風19号3カ月 甚大被害今なお 「米作付け見通せぬ」

濁流が押し寄せ、大量の流木が放置されたままの揚水機場。蓮田さんは、見通しが立たない揚水機場の復旧に気をもむ(茨城県常陸大宮市で)

 台風19号の被災から3カ月が過ぎた。茨城県や長野県の米どころでは、田んぼに土砂が流れ込んだ他、用水路や揚水機場などの農業施設も被害を受け、今春の米の作付けが一部で危ぶまれている状況だ。復旧工事も急ピッチで進んでいるが、災害の規模が大きく農家は先が見通せないでいる。(木村泰之、藤川千尋)
 

揚水機壊滅着工に遅れ 茨城


 茨城県によると、台風19号による農地への土砂流入などの被害金額は18市町で推計14億2300万円。水をくみ上げる揚水機場は16市町で137施設が冠水し、推計被害額は12億3200万円に上る。

 常陸大宮市下伊勢畑地区では、1級河川の那珂川の堤防が約300メートルにわたり決壊。周辺の水田に高さ4メートルの濁流が押し寄せた。

 稲作農家の蓮田和美さん(59)は、稲刈り前の3ヘクタールが濁流にのまれた。同地区は約15ヘクタールが被災し、今も、崩れた堤防から流された砂利やアスファルトが散乱し手が付けられない状況だ。幅約1・5メートルの排水路も土砂で埋まった。

 農家25人で管理する上川原水利組合の揚水機場も水没した。「揚水機場の被害は致命傷。水が確保できなければ今作は断念しないといけない」と蓮田さんは話す。揚水機場は1969年に建てられた。被災したポンプは95年に更新され、くみ上げた地下水を全長約2キロのパイプラインを通じて、約10ヘクタールに農業用水を供給していた。

 市は用排水路の撤去や農道の再整備などを優先して工事を進めている。「同地区の復旧費用は1億円以上を見込んでおり、市内でも最も被害が甚大。水田の堆積物の撤去も揚水機場も国の災害復旧予算への適用を求めながら、1月下旬以降に工事を発注し、着手したい」(市農林振興課)としているが、田植えが始まる5月に工事が完了するかは不透明だ。工事の遅れについて「被害が広範囲である上に、業者と資材の調達の遅れも一因」(同)としている。

 蓮田さんは「田植えを諦める人もいる。どの程度の水田で田植えができるようになるのか、市はいち早く工事の見通しを示してほしい」と要望する。
 

復旧急ぐも消えた面影 長野


 長野県内で有数の米どころ、佐久地域。佐久市の市川一成さん(47)は「被害の大きい田んぼでは、今年の春の作付けは不可能だと思う」と言って、肩を落とす。

 千曲川の支流・滑津川の決壊で、約8ヘクタールの田んぼが被害を受けた。田は濁流にのみ込まれ、被害の大きい所ではのり面をえぐり取られて原形をとどめていない。「コシヒカリ」などを育てた土は見る影もなく、今も川の石が散乱している。

 例年なら作付けの準備をする時期だが、今年は農地の復旧にも追われている。被害の程度が軽く復旧できる田んぼの片付けを行う市川さんは「被災した農地のうち、春までに半分くらいは何とか復旧したい」と復興への思いを強調する。
 
水にのみ込まれた稲穂を手に取り、肩を落とす市川さん(長野県佐久市で)

 地域では、田んぼに水を送る用水路や頭首工など、農業用施設の復旧も課題だ。JA佐久浅間営農企画課の小林浩一課長は「施設が復旧しても末端の水路やパイプで泥の堆積や破損があるかもしれない。水を流してみないと、実際に田んぼに水が供給されるか分からない」と気をもむ。

 県がまとめた昨年12月19日時点の被害額は農地で275億円(1658ヘクタール)、取水施設や水路などの農業用施設で286億円(3339カ所)に上る。中でも佐久地域では、農地で71億円(568ヘクタール)、農業用施設で119億円(1894カ所)に達する。

 県佐久地域振興局農地整備課は「仮設施設などで農地に水を供給できるよう、できる限りのことをしたい」と話す。ただ「被害の規模が大き過ぎる。全ての被災農地や施設で工事を始めるには、膨大な(測量や事務手続きなどの)作業が必要」と説明。今春の米の作付けに復旧がどの程度間に合うのか、先を見通せない状況だ。
 

おすすめ記事

地域の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは