なんともきな臭い年明けである

 なんともきな臭い年明けである。中東でロケット砲が飛び交うさまに、正月気分も吹き飛ぶ▼ところで、何ゆえ「正月」というのか。「正しい月」と称されるのは1月だけ。これに該当する英語は見当たらないらしい。『日本語源大辞典』によれば、1月は秦(しん)の始皇帝の降誕月で「政月」と呼び、音が改まり「正月」になったとある▼そう説明されてもぴんとこないが、新年に居ずまいを正し、心新たに一年の計を立てる。それが多くの日本人の実感だろう。だが漢字学者の阿辻哲次さんは、「『正』とはもともと非常に血なまぐさいことを表す漢字だった」という(『漢字のいい話』新潮文庫)▼阿辻さんによると、「正」は城壁に囲まれた集落に攻撃を仕掛けている形を表す。つまり他国に攻め入って戦争すること。勝てば官軍、勝者は正義となり、本来の「戦争」という意味は次第に薄れ、「正しい」が定着した。「戦争」の方は、征服の「征」の字にその名残が見て取れる。そんな来歴を阿辻さんの著書で知る▼湾岸戦争の開戦は29年前のきょう。今回の米国とイランの衝突は、まさに「正」の字の成り立ちを地でいくがごとしである。正邪の区別もつかぬ愚かな為政者の犠牲になるのは、いつの世も無辜(むこ)の民である。正気を取り戻せと願うよりない。

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