漆の復興村総出 毎年200本植樹へ 地域おこし協力隊プロジェクト 古来の産地・奈良県曽爾村

植樹したウルシの木の生育を確認する並木さん(奈良県曽爾村で)

曽爾村産の漆を使った机と椅子、円内は器

9割中国産 ”待った”


 古くからの漆の産地、奈良県曽爾村で、村を挙げて漆の生産拡大を目指すプロジェクトが始まった。国内で利用される漆の9割以上は中国産。国産は少なく漆器の製作や文化財の修復に海外産を使っているのが現状だ。村内で植樹を進め、10~15年後に漆が取れるようにする。漆器だけでなく、県内の国宝や重要文化財の修復を賄えるだけの生産量を目指す。(藤田一樹)

 村によると、同村塩井地区には奈良・平安時代に朝廷の漆の生産拠点「漆部造(ぬりべのみやつこ)」が置かれ、国内の漆塗り発祥の地ともいわれている。しかし伐採や杉、ヒノキの植林で、自生していた多くのウルシの木がほとんどなくなった。

 この状態に待ったをかけようと、2005年に同地区の住民らが「漆ぬるべ会」を立ち上げ、植栽などをしてきた。ただ、会を結成してから15年近くたったため、会員が高齢化し活動の停滞が懸念されるようになった。

 そんな中、18年に地域おこし協力隊として、並木美佳さん(30)が村に移住した。美術大学で漆塗りに興味を持ち、漆塗りの家具を扱うメーカーに就職。「漆文化を伝える仕事がしたい」と移住し、漆産業の復活に向け活動を始めた。機運を生かそうと、住民も村総出で漆産地の復興に乗り出すことにした。

 プロジェクトには、村や同会、村森林組合などが参加する。毎年200本を植樹する計画で、植えてから10~15年で漆が取れるようになる。1本の木からは約200グラムの漆が採取できる。
 

いつか国宝修復に…


 村によると、年間約20キロの漆があれば県内の国宝、重要文化財の修復に必要な量を賄えるという。中国産の利用が中心となっている漆器作りにも、村の漆を販売できるようになる見込みだ。

 プロジェクトでは、村内の小・中学校や住民向けの漆講座、漆器の貸し出し、漆器を使った食のイベントなども計画する。村は「曽爾村を再び漆の産地にし、文化財修復の地産地消を実現したい」(企画課)と力を込める。

 プロジェクトに携わる並木さんも「ウルシの木は触るとかぶれるため敬遠する人もいるが、漆を育てることが村の日常になってほしい」と期待を寄せる。
 

文化庁 国産推進も不足


 漆は、ウルシの木に切り込みを入れ、染み出した樹液から作る塗料。寺社仏閣の修復や漆器などに使われる。林野庁の統計によると、漆の生産量は約1・8トン(2018年)。一方、輸入量は約36トン(同)で、国内に出回る漆の大半が中国産だ。

 文化庁は15年、国宝、重要文化財の修復に原則として国産漆を使う方針を示した。同庁によると国内の国宝、重要文化財の修復に必要な漆の量は年間2・2トン。国産が足りていないのが現状で、需要が高まっている。

 日光東照宮など国内には漆を使った国宝、重要文化財が約400棟あり、5分の1に当たる約90棟がある栃木県を筆頭に、静岡県や京都府、東京都などに多い。
 

おすすめ記事

地域の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは