[あんぐる] 寒ければ寒いほど…味わい深く 奥飛騨山之村寒干し大根(岐阜県飛騨市神岡町)

すずしろグループが生産する「奥飛騨山之村寒干し大根」。乾燥が進むにつれ、白いダイコンが琥珀色に変わる(岐阜県飛騨市で)

 岐阜県飛騨市の山間部にある神岡町山之村地域で、冬のいてつく寒さを生かして作る「奥飛騨山之村寒干し大根」の天日干し作業が進んでいる。厳しい冬を越すための伝統的な保存食だが、今では地元住民の冬のなりわいとして定着している。

 山之村地域は同町内の山深い7集落の総称。標高が約1000メートルあり、雪が2メートル以上積もる特別豪雪地帯で、かつては冬の間、雪で閉ざされた。このため、貴重な食料として寒干し大根作りが盛んになった。

 氷点下20度まで下がる気温や、積もった雪で土ぼこりが飛ばないといった環境も加工に向いている。

 作業は寒さが増す12月下旬に始まる。材料のダイコンは10月下旬に一度収穫し、葉を落とし地中に埋めて保存したものを使う。皮をむき、厚さ2センチの輪切りにして30分ゆで、軟らかくなったら棒に刺し、家屋の軒先などにある棚に掛けて1カ月間置く。寒風や天日にさらし、凍ったり解けたりを繰り返しながら水分が抜け、琥珀(こはく)色に変わると出来上がりだ。

 生のダイコンと比べて糖質が20倍、繊維質が14倍に凝縮し、甘味と歯応えのある味わいが生まれる。

 住民9人でつくる加工グループ「すずしろグループ」は、同地域で寒干し大根を唯一出荷している。会長の岩本智恵子さん(49)は「暖冬でかびに注意して乾燥したため大変だったが、出来は良い。すき焼きやグラタンに入れても絶品です」と笑顔を見せる。
 
ゆでたダイコンを素早く棒に刺す。作業場は常にダイコンから上る湯気で満ちていた
 
 同グループは、地元の主婦が自家用だった寒干し大根を商品化し、冬場の収入を得ようと1986年に立ち上げた。設立当初に付けた商品名「奥飛騨山之村寒干し大根」が、2017年に国の地理的表示(GI)保護制度に登録された。

 今期は乾燥後で約1トンを3月上旬までに生産し、地元のJAひだなどに出荷する予定。例年、3月中に予約注文で売り切れしまう人気商品となっている。

 同グループの初代会長、下林津谷子さん(91)は「寒干し大根で冬に仕事ができ、村はとても活気付いた。今でも、村内の若い人が熱心に参加してくれています」と話す。(釜江紗英)

「あんぐる」の写真(全4枚)は日本農業新聞の紙面とデータベースでご覧になれます    

おすすめ記事

あんぐるの新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは