直接支払い巡り市町村 集落支援手が回らぬ 現地確認、書類…担当職員が悲鳴

多面的機能支払交付金の現地確認をする市職員(新潟県十日町市で)

 中山間地域等直接支払制度をはじめとした農水省の「日本型直接支払制度」を巡り、市町村の負担が増し、現場での推進に支障が出かねない状況にある。職員数が減り、担当者の事務作業が増大。農家の高齢化が進む中、活動の継続に向けて集落での話し合いなどをサポートしたいが、時間を割くのもままならない市町村が少なくない。作業の効率化や人件費の助成などの支援が求められている。(吉田朋記)
 

人件費助成、作業効率化が急務


 「これ以上職員が減ったら、今の作業量をこなすのは相当難しい」。新潟県十日町市の職員は、山あいに広がる農地を1カ所ずつ見回りながら、打ち明ける。

 中山間地域等直接支払制度と多面的機能支払交付金、環境保全型農業直接支払交付金は、現地できちんと活動していることが確認されなければ集落や農家に交付金が支払われない。現地確認し、国への報告書類を作るのは市町村の仕事だ。

 同市では多い年で同制度の担当職員が7人いたが、現在は6人に減った。中山間地域等直接支払制度だけでも93集落、計2592ヘクタール(19年度)の農地を確認する必要があるため、1人減るだけでもしわ寄せは大きい。職員は日中に現地確認後、市役所に戻って書類を作る。期間中は残業も多く、体制はぎりぎりの状態という。

 同制度は5年ごとに協定を結ぶ。ただ、高齢化で活動を続けるのが難しい集落が増えている。市内でも、20年度から新たな5年間が始まるのに合わせ、活動をやめることを考える集落があるという。市は継続に向け働き掛けているが、「担当職員が事務作業で手いっぱいでは、集落のサポートは難しい」(農林課)と訴える。事務作業の効率化へ、報告書の簡略化などを求めている。

 中山間地域等直接支払制度を活用する156集落を抱える広島県北広島町は、同制度と多面的機能支払交付金を職員4人で担当している。これまで町は、臨時事務員を雇う財源などに活用できる中山間地域等直接支払推進交付金で、多い年には4人を臨時雇用してきた。

 だが、推進交付金は縮小傾向だ。国の19年度予算額は現在の第4期対策が始まった15年度比62%減の約2億円。同町によると、19年度の交付額は15年度のおおむね半額の100万円程度という。書類の印刷費用など必要経費を優先せざるを得ず、18年度以降、臨時雇用ができていない。現在は4人で延べ2803ヘクタールを見回る。

 町は第5期対策が始まる20年度以降も、各集落で活動が続くよう呼び掛けたい方針。だが「職員の負担が増えている。活動維持に向け集落を支えるには何とか時間を割くしかない」と話す。
 

書式簡略化やドローン検討 農水省


 農水省は、日本型直接支払制度の第三者委員会で課題を検証している。多くの委員が市町村の人員体制の弱体化や負担軽減を課題に挙げた。市町村では、同制度を構成する三つの制度を同じ部署で担当する事例が多い。だが関連書類の形式は異なる。同委では簡略化などを提起する意見がある。

 同省は現地確認の効率化に向け、ドローン(小型無人飛行機)などでの撮影写真も使えるよう検討する。推進交付金は21年度以降も財源確保を目指すが、財務当局との調整がどうなるかは未知数。同省は「地域の活動継続に向けて随時、制度を改善する」(地域振興課)と話す。
 

おすすめ記事

農政の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは