畜産クラスター道内全域へ拡大 生産維持に欠かせぬ

畜産クラスターを活用した「学林ファーム」で牛を確認する駒井取締役(北海道八雲町で)

 北海道で、畜産クラスター事業の活用が全域に広がっている。179市町村のうち施設整備で68、機械導入で131の自治体(2019年7月現在)が活用し、高齢農家の負担軽減などで生乳の安定生産につなげている。今後は事業の狙いである、関連業者が地域ぐるみで連携した高収益型畜産の実現が重要となっている。

 同事業は14年度から始まった。規模拡大につながる牛舎や堆肥舎、搾乳ロボットなどの施設整備や機械導入費用の半分以内を補助する。農産物の自由化が進む中、競争力を高めるのが狙いだ。道は「酪農地帯の十勝や根釧の他にも、オホーツクや道南など他地域でも活用が始まっている」と話す。

 天塩町では19年4月、合同会社ミルクファーム天塩が稼働を始めた。JAてしおが出資し、酪農家ら7人で構成する。乳牛500頭(搾乳牛360頭)を飼育し、高齢農家の負担軽減へ飼育を肩代わりする。牛舎やバンカーサイロなどの施設整備費などに同事業を活用した。

 同社代表社員の佐藤博幸JA組合長は「酪農の灯を消したくない」と設立の理由を説明。「生産は順調。従業員も新たに導入したロボット搾乳に慣れてきた」と手応えを話す。搾乳量を10年後に現在の3倍にする目標を掲げる。

 八雲町では17年、学林ファームが稼働を始めた。酪農家2人と函館酪農公社が連携、同事業で立ち上げた。牛舎や作業機械などで補助を受けた。フリーストールで乳牛450頭を飼育。現在は年間約2500トンの生乳を出荷し、将来は5500トンが目標だ。

 役員を含め19人が働く。酪農家が減少する中、地域の生乳生産の維持・拡大を目指す他、従業員は異業種からの転職組が多く、人材育成も担う。駒井貞二取締役は「従業員教育に力を注ぎたい」と話す。
 

「地域ぐるみ」課題


 全国の生乳生産の半分以上を占める北海道でも酪農家の減少に歯止めがかからない。同事業は生産基盤の維持、発展にとどまらず、「クラスター(ブドウの房)」のように畜産農家を支えるさまざまな関係者との連携で、地域の畜産業の発展を目指すものだ。

 ミルクファーム天塩の佐藤代表社員は、関係機関との連携強化を今後の課題の一つとみる。「合同会社はまだ始まったばかり。JAや町、TMRセンターなどと今後も力を合わせたい」と、連携体制を軸に規模拡大や後継者確保に取り組み、地域の酪農を守る考えだ。同事業の在り方が論点の新たな酪農肉用牛近代化方針(酪肉近)の議論が進む。JAグループ北海道は、同事業を家族経営を含む生産基盤強化に向けた要とみる。

 同事業の方向性について北海道大学の清水池義治講師は「関係者の集まる畜産クラスター協議会を設置して終わりではなく、恒常的に実質化することが重要。特に新規参入の受け入れなどでは連携が不可欠」と、従来以上の地域ぐるみでの事業活用を提案する。
 

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