新型肺炎で余波「マスク買えない」 豚熱対策、食品加工 衛生第一…現場は困惑

マスクが売り切れた薬局内の陳列棚(神戸市中央区で)

品薄いつまで 増産努力も追い付かず


 新型コロナウイルスの感染拡大で、使い捨てマスクや除菌用品の売り切れが続出している問題を受け、農業現場にも影響がじわり広がってきた。豚熱や鳥インフルエンザなど家畜伝染病に対応する畜産農家や、食を扱う加工施設では必需品だが、「品不足で今後が心配」との声が出始めた。メーカーは増産を急ぐものの、供給が追い付かない状況だ。

 マスクやアルコールなど除菌用品の品薄は1月下旬から、中国・湖北省の新型肺炎の感染拡大を契機に始まり、日ごとに深刻化している。政府はメーカーに、マスクの増産を要請していく方針を示すが、インターネットやドラッグストアでの販売は品切れで買えない状況が続き、高値で転売もされているほどだ。

 日本衛生材料工業連合会によると、年始の時点にあったマスクの在庫10億枚は、既になくなった。マスクは通常、輸入品が7割で国産が3割。現在は中国などからの輸入が減り、国産メーカーが増産に懸命だ。

 同連合会の高橋紳哉専務は「マスクの生産は毎年度、前年比4%増ほどの伸び率だが、今年度はそれを大幅に上回る生産になる。2009年に流行した新型インフルエンザの時と同様、今回もできる所は全て増産体制に入っている」と説明する。

 一時的な需要の急上昇に対し、困惑するのが普段マスクなどを多用する医療現場や農業現場だ。農業資材やマスクを供給するメーカーによると、マスクや消毒の資材、防護服、フィルター層などの注文は連日あるが、現時点では対応できないためほぼ断っている。

 担当者は「各メーカーが増産しているので特需はいずれ落ち着くと思うが、新型肺炎の終息が見えない。これから花粉症シーズンに入る。先行きが見通せない」と嘆く。
 
マスク着用が必須のウインナーソーセージ加工
 

 

 7000頭の豚を飼育する「東京養豚」(本社・東京都足立区)。豚熱やアフリカ豚熱の衛生管理対策のため、豚舎ではマスクが欠かせない。現在マスクは在庫分で賄い、当面1カ月は足りるが、品薄の長期化が不安材料だ。入手困難な状況が続けば、洗浄可能な布製のマスクに切り替えるという。

 同社養豚事業部の下田光一部長は「衛生管理の水準は絶対に落とせないので、何とかやりくりしていく」と見据える。

 島根県大田市で31万羽を飼養する「旭養鶏舎」でもマスクの納期が遅れ、苦慮している。在庫でしのぐものの、65人の従業員が1日数枚を使い捨てで使用するためマスクは大量に必要だ。同社の竹下正幸会長は「今まで(定期的に)買ってきた実績を元に購入先にお願いするしかない」と話している。

 衛生管理対策を進める農家だけでなく、食品加工施設にも影響が及ぶ。「まだ在庫があるので問題がない」とする調理場や加工所も複数あるものの、一部の食品加工施設からは「マスクや消毒用品が足りない」との声が出始めている。

 北海道のJAの食品加工施設では、従業員が着用するマスクの入手が難しくなり、さまざまなメーカーに出荷を依頼している最中だ。担当者は「マスクの手配で忙しい。今すぐの出荷は難しいと言われている」と困惑する。

 医療現場も、対応に苦慮する。JA新潟厚生連小千谷総合病院は「マスク2万枚は入手したが、3月末には在庫が底を突く。対応を考えないといけない」と明かす。JA愛知厚生連渥美病院は「従業員のマスクは在庫分で当面賄えるが、売店で患者用のマスクの販売は制限せざるを得ない状況だ」としている。
 

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