農産物輸出連続増の実態 大半は海外原料加工品? 経済効果検証できず

 農水省は、2019年の農林水産物・食品輸出額が「7年連続して増えた」と発表した。牛肉や乳製品、米が前年に比べて2割以上伸びたと胸を張るが、農産物輸出入という収支で見れば、輸出額は輸入額の1割に満たない。首をかしげたくなるような品目も農産物に含まれている。農産物の輸出が増えたことで、農業経営にどの程度のプラスとマイナスがあるのかを説明するべきだろう。

 同省が7日に発表した輸出資料には、登場しない農産物の品目がある。「各種の調製食品のその他のその他」と呼ばれる関税コードに含まれる食品だ。896億円で、単一品目としては最大額。牛肉の297億円やリンゴの145億円を大きく上回る。前年に比べ約100億円伸びていることから、農産物全体の増加額216億円の半分は、この品目に属する食品の伸びが稼いだ計算だ。

 農産物輸出額増加の最大の功労者とも言えるが、実態は謎だ。

 「さまざまな食品類の寄せ集めで中身は分からない」というのが、7日の記者会見での同省の説明だ。こうした謎の「食品」が含まれている農産物輸出額を、政策目標とすることにどのような意味があるのか。

 農林中金総合研究所の清水徹朗理事研究員は「19年の農産物輸出額5877億円の中で、国産農産物やそれを原料にした日本酒などの加工食品は1000億円に満たないのではないか。多くは海外原料に依存した加工食品だ」と指摘する。

 農産物輸出によって、日本の農業にどの程度の経済効果が出るのだろうか。同省は「産地に聞き取りしたら、市場拡大に役立ったなどの声が寄せられた」と説明するものの、数字による影響評価は行っていない。経済連携協定を結ぶ時には、輸入増加でどの程度の影響があるかを示してきたのとは対照的だ。

 4月から施行される農林水産物・食品輸出促進法は、第1条で輸出によって「農林水産業及び食品産業の持続的な発展に寄与する」ことが目的だと明記してある。政府は近年、「証拠に基づく政策立案」を掲げてきた。政策は目的を明確にして数値による合理的な根拠で推進するべきだという内容だ。政府の農林水産物輸出政策は、具体的な効果が検証できない点で自らの方針に反している。

 欧州や米国では農産物貿易の分析で輸出と輸入のバランスが重視される。「牛肉や米の輸出が増えたと言っても日本の農産物は圧倒的に輸入が多い。輸出額だけを取り上げ過大評価するべきではない」と清水研究員は指摘する。

 (特別編集委員・山田優)
 

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