酒米独自品種が続々 地域性や加工適性重視 酒蔵が要望、輸出に弾み

 米産地で酒造好適米の独自品種を開発する動きが相次いでいる。日本酒の国内外への販路拡大に向け、地域性を打ち出せる原料米を求める声が酒造業界で高まっていることが背景だ。堅調な消費が見込まれる大吟醸酒への加工適性を高めた品種が目立つ。

 農水省が直近2年で「産地品種銘柄」に登録した品種のうち、2019、20年産デビューの県育成の酒造好適米は7品種に上る。

 福井県では、県が酒造好適米として初めて開発した「さかほまれ」の本格栽培が19年産から始まった。同品種は、酒造好適米の主力品種「山田錦」に、JAテラル越前が開発した酒造好適米「越の雫」を交配して育成。「フルーティーで香り豊かな日本酒に仕上がる」(同県)のが特徴だ。

 19年産は8ヘクタールで30トンを生産。県内30の酒造メーカーのうち18社が同品種で商品開発しており、今年4月に一斉発売する見込みだ。県は「原料米の産地を重視する海外向けの販売に追い風となる」と展望する。

 大吟醸酒への加工適性を高めた新品種を投入するのは石川県。20年産から、同県が開発した酒造好適米「百万石乃白」の本格栽培が始まる。

 従来品種は精米時に割れやすく、原料米を大きく削る必要がある「大吟醸」を造る上で使いづらいという課題があった。新品種は精米時に割れにくく、「雑味が少なくすっきりした味わいの日本酒に仕上がる」(同県)のが特徴だ。19年産は13ヘクタールで60トンを試験栽培。県内34酒蔵のうち20社が、新品種を使った日本酒を今春にも発売する見通しだ。

 日本一の酒米産地、兵庫県は輸出に照準を合わせる。20年産から、新品種「Hyogo Sake 85(ヒョウゴ サケ エイティファイブ)」の栽培が本格的に始まる。品種名がローマ字表記の酒造好適米は国内唯一で、県は「海外でも通用するように名付けた」と話す。

 他にも、福島県の「福乃香」や高知県の「土佐麗」は19年産から栽培が始まった。秋田県の「一穂積」や島根県の「縁の舞」は、20年産から栽培が本格化する。

 近年、日本酒の生産量は減少傾向だ。国税庁によると、データがある直近の17酒造年度(17年7月~18年6月)の生産量は41万キロリットルで前年度比1%減。一方、分類別ではこだわりの酒造りに必要な精米基準などを満たした「特定名称酒」は同1%増の17万キロリットルで、増加傾向だ。輸出量は近年増加傾向で、国内生産量の6%に達している。(北坂公紀)
 

“個性化”が必須 

 

 日本酒造組合中央会の宇都宮仁理事の話


 近年、各地で酒造好適米の独自品種を開発する動きが盛り上がっている。独自性を打ち出した日本酒開発を目指す酒造業界の声が高まっていることが背景だ。新品種を使った商品開発が活発化し、日本酒の消費拡大につながってほしい。海外には地元産の原料にこだわる「テロワール」というワイン文化がある。日本酒にテロワールを求める輸出先もあり、“地域独自米”で造る日本酒が増えれば輸出拡大も期待できる。
 

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