生乳需給見通し 酪農構造変化 対応急げ

 生乳生産が回復軌道に乗ってきた。Jミルクの2020年度需給見通しでも2年連続増産を見込む。一方で課題も深刻化している。問題は持続可能性の確保だ。自由化や後継者不足による酪農構造の変化を直視した対応が欠かせない。

 今回の需給見通しでは、酪農構造変化を三つの数字が象徴している。まず、北海道の生乳生産は今年度が409万トンと初めて「400万トン時代」に突入したことだ。増産を支える北海道傾斜がさらに強まった。来年度は前年度比3%増の423万トンを見込む。

 問題は北海道と都府県とのバランスだ。今年度の道産生乳比率は55%、来年度はさらに1ポイント上がり56%強で、6割に近づく。酪農・乳業界の最大課題は双方の均衡発展である。生乳需給が逼迫(ひっぱく)する8、9月の対応は、まさに綱渡り対応だ。特に台風襲来が増える9月に北海道から大量の生乳を輸送するには大きなリスクが伴う。

 二つ目の数字は、北海道と都府県の生乳生産格差がほぼ100万トンとなることだ。来年度見通しは、都府県が324万トンで、北海道との差は99万トンに達する。今年度の差83万トンに比べ一段と大きくなる。

 もともと北海道と都府県の役割は違う。北海道は大規模低コスト生産で国際競争力を念頭に乳製品生産を担う。そこで、4大乳業メーカーは基幹工場を多数配置している。一方で都府県は大都市近郊の需要に応じた飲用牛乳供給を主とする。だが、都府県酪農の地盤沈下から原料乳の手当てが間に合わず、遠方の北海道から夏場に生乳を運ぶいびつな形が強まってきた。

 ではどうする。都府県の生産のてこ入れに、来年度酪農対策でも乳牛増頭対策などを拡充した。来年度の都府県の生乳生産見通しは前年度比99・3%とほぼ前年並みとなる。これを増産にまで押し上げ、北海道との均衡発展が迅速に実現することだ。

 三つ目は、脱脂粉乳の国内在庫が拡大し、来年度見通しが過去20年間で最高の7・4カ月に達することだ。適正水準は5カ月前後とされる。乳製品の需給不均衡の対応が必要だ。農水省は、乳製品輸入枠発表の会見で「輸入実施には慎重に対応する。業界挙げて需要を喚起していきたい」と強調した。このため、脱粉の来年度輸入枠を4000トンと、前年度比で7割減に抑えた。あくまで予定枠で、実際の輸入入札は需給に応じて減らすこともできる。

 だが関税が段階的に削減され、自由化が進展する。自由化リスクは、生乳需給に影響を及ぼしかねないと危機感を持つべきだ。一方で、メーカーはヨーグルトなどの新商品開発を一段と加速すべきだ。

 こうした生乳需給見通して浮き彫りになった三つの数字を踏まえ、国が先頭になり、持続可能な酪農乳業確立へ政策支援を強力に進めるべきだ。

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