もう2月も半ば

 もう2月も半ば。この冬は鍋料理をあまり食べていないことに気付く。苦しむ農家には申し訳ないが、暖冬だとあまり食指が動かない。鍋奉行ならぬ鍋不振▼先日、久しぶりにドジョウ鍋を楽しんだ。冬の滋養が臓腑(ぞうふ)に染み渡る。そのうまさは、柳川鍋の本場、福岡出身の作家・檀一雄に食リポしてもらおう。「卵の半煮えのうまみと、ドジョウのうまみと、新ゴボウの香りが、混然とまじり合って、あんなに結構な食べものはない」▼彼の著書『檀流クッキング』(中公文庫)から引いた。無頼作家にして天性の料理人だった。同著から鍋料理を拾うと、ショッツル鍋、タイチリ、キリタンポ鍋、アンコウ鍋、羊肉のシャブシャブ、ブイヤベースなど多彩。作り方を指南し、読者の食欲をこれでもかと刺激する▼『たべもの史話』(鈴木晋一箸・小学館ライブラリー)によると、鍋の歴史は意外と浅く200年ほどしかない。いまの原型である小鍋立てが普及するのは江戸時代。身分や職業、性別に関係なく、大勢で一つの鍋を囲むことは画期的だった。だから鍋料理は「食生活のなかで日本人が身分差別を克服したモニュメントの一つではないか」と鈴木さん▼それがいまや一人鍋が時流だとか。鍋の変遷は食卓や家族の変化を映す。だんらんも遠くなりにけり。

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