新たな自給率目標 飼料増産の機運そぐな

 次期の食料・農業・農村基本計画で農水省は、飼料自給率を反映しない新たな自給率目標を設定する方針だ。畜産農家の生産努力を考慮するなどの狙いがあるが、飼料の多くを輸入し、その依存度が高まっているのが実態だ。食料安全保障の確立へ飼料自給率向上への取り組みがおろそかになってはならない。

 日本の飼料自給率は25%(2018年度)と低い。それを反映させた現行の自給率の算定では畜産物は低くなり、全体が上がらない要因になっている。現行のカロリーベースは過去最低の37%(同)。飼料自給率を高めないと、畜産農家が頑張って生産を増やしても全体の自給率の向上にはつながりにくい。

 新たな自給率目標はカロリーベース、生産額ベースともに飼料自給率を反映しない「産出段階」の数値。カロリーベースでは46%になる。現行基本計画の目標の45%を上回り、数値を高く見せるためではないかとの誤解を招きかねない。狙いについて分かりやすい説明が必要だ。

 また飼料自給率を反映しないと輸入飼料に依存している実態が見えにくくなる懸念がある。飼料自給率は3年連続で低下。そうした危機感が国民に伝わらず、飼料増産・耕畜連携や、国産飼料給与の畜産物を食べようといった機運がそがれるようなことがあってはならない。

 飼料自給率向上の要である飼料用米について現行基本計画は、25年度には、13年度の10倍に当たる110万トンに増やす目標を設定。しかし作付面積は米の生産調整を見直してから18、19年産と連続で減り、18年産の生産量は43万トンにとどまった。

 飼料自給率の低い日本は、飼料の輸入が滞れば畜産物生産に大きな影響が出る。食料安保が危ぶまれる中、新たな自給率目標設定を巡っては慎重な扱いを求める声が相次ぐ。自民党では「飼料の国産化にマイナスにならないように」、次期基本計画を議論する同省の食料・農業・農村政策審議会の企画部会でも「土地利用型の飼料作物の振興を」などの意見が出た。

 自給率目標を含む基本計画の根拠法である食料・農業・農村基本法は、「食料の安定供給の確保」のために「国内の農業生産の増大が基本」「国民生活の安定に著しい支障が出ないよう供給を確保」といった理念を掲げる。それを具現化するのが自給率目標だ。国内で作れるものは作るとの姿勢を堅持すべきだ。飼料用米をはじめ飼料生産は農地の有効活用の上でも重要で、自給力の確保にも役立つ。

 次期基本計画では、飼料自給率を反映した従来の自給率目標と反映しない新たな目標を、カロリーベースと生産額ベースそれぞれで設定、四つの数値が並ぶことになる。これに飼料自給率目標を加えると五つになる。

 新たな自給率目標の設定には、消費者に国産消費の意義を実感してもらう狙いもある。同省は、各目標の役割を丁寧に説明し理解を深める必要がある。

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