農産物物流苦境に 運転手不足に働き方改革… 工夫凝らし出荷確保 JAしまね

ストックを出荷する田中さん。ドライバー不足は、生産者の負担増にもつながっている(松江市で)

 島根県の農産物が、物流で苦境に追い込まれている。トラック運転手の不足に加え、働き方改革を目指す改正労働基準法で運転手の拘束時間の上限規制が強化され、首都圏などへの長距離輸送の維持が難しくなっているためだ。花きでは運送業者の撤退が相次ぐ中、産地は運送ルートの一元化や近距離市場での販路開拓などで生き残りを懸ける。(鈴木薫子)

 「撤退したい」。2019年、島根、鳥取両県の農水産物輸送を約40年間担ってきた光浪運送(松江市)の一言に、JAしまね園芸課の花き担当者は衝撃を受けた。島根県は東と西の端が230キロ離れる。花き物流は東西で分けていたが、18年9月までに西部を中心に運送業者9社の撤退・変更が相次ぎ、残った大手業者が同社だった。

 運送業者の壁となっているのが、運転手の拘束時間だ。19年4月施行の改正労働基準法で、拘束時間の上限は1日13時間を基本とし、次の運行まで8時間以上の休息が必要となった。島根から760キロ先の東京まで農産物を運ぶには11、12時間を要する。同社はドライバー2人体制や東京での宿泊などで対応するが、コストはかさむ一方だ。

 島根県は、他県より積載効率が悪いことも運送業者を悩ます。もともと出荷量が全国上位の品目は少なく、近年は天候不順が相次ぎ、まとまった量が集まらないこともある。同社も農産物が主体だったが、今は7割が水産物。同社の陶山秀幸常務は「運送は慈善活動じゃない。負担が大きい品目を見直さなければいけない」と本音を漏らす。
 

ルート一元化近距離市場に でも農家負担ずしり


 そこで、運送業者の負担を減らそうとJAは花きの運送ルートを一元化する構想を打ち出した。県1JAのスケールメリットを生かし、地区本部ごとだった集荷を集約し数量を確保する──。両者で協議し、同社は「昔からの付き合い。地場産業を応援したい」(陶山常務)と継続を決めた。

 運送ルートの一元化は19年6月から開始。現在は、西いわみ地区本部管内と島しょ部を除き、光浪運送が県内集荷を担う。県中西部など遠方からの集荷は、JAが別の会社に依頼し、県東部の松江市にある光浪運送まで運ぶ体制を整えた。

 出荷先も見直した。9地区本部で全国に30カ所近くあった出荷先は、距離が比較的近い関西市場を中心に6カ所に集約。市場間の転送機能も使い、県外計8カ所と県内1カ所に出荷する。県外へは光浪運送の他、2社が輸送する。

 運送ルートは維持できたが、課題は多い。生産者が負担する集荷・配送運賃は2倍になった。出荷量も想定には達していない。松江市で、花きなどハウス園芸を手掛ける田中勝さん(39)は「輸送費や段ボール代、市場手数料などコスト上昇ばかり。家族経営では負担が大きい」とこぼす。

 JAは、10年後も産地として生き残るための戦略として、関西市場への出荷強化を柱に位置付ける。20年度は、従来の手積みから、台車ごと積み込む輸送の試験を検討。地域の農業の未来には、運送業者の負担軽減が欠かせないとみる。
 

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