小さな拠点に期待大 食堂や加工品開発、日用品販売 大分県豊後大野市JA女性部が運営

「なごみ茶屋」を運営するJAの女性部員。開発した加工品のPRを話し合う(大分県豊後大野市で)

 大分県豊後大野市でJAおおいた女性部の5人が運営する、小さな拠点が、食堂や加工品開発、日用品の販売などを通じ地域のよりどころとなっている。過疎・高齢化が進む地区を守りたいと女性たちが始め、地区に欠かせない存在となってきた。内閣府によると、小さな拠点を運営するJA女性部は珍しく、今後広げていくモデルにもなるという。

 同市緒方町上緒方地区にある「なごみ茶屋」は、JAおおいた豊後大野女性部の部長、工藤和代さん(66)らが2018年7月に立ち上げた。月~金曜、食堂の運営や日用品の販売、加工品開発、弁当の受注などをしている。メンバー5人は同地区在住のJA女性部員で、もともと一緒に加工品作りをしていた間柄だ。

 地区の住民は760人で高齢化率は6割超。学校の統廃合や商店の閉鎖など、人が集まりにぎわいが創出される場所が地域から次々消える中、工藤さんは「生まれ育った地域からともしびを消したくない」との思いで高齢者の居場所づくりを目指し、運営を始めた。

 元エーコープ店舗だった場所を借り、内装は地域の人にも手伝ってもらってほぼ自前で調理施設や食堂にした。提供する料理は「地産地消」で「身土不二」がモットー。野菜たっぷりの定食は600円で、ひな祭りなど季節ごとの御膳も人気だ。

 運営開始から1年半。メンバーで総務担当の佐藤智子さん(68)は「無我夢中でやってきて、やっと自分たちが目指す、地域に必要な存在に近づいてきたのかなと思う」と振り返る。メンバーはほぼ手弁当だが、運営は黒字を保つ。5人全員、「地域に欠かせない拠点」になってきた実感があるという。

 現在は高齢者が集まったり、地区でグランドゴルフなどイベントが終われば必ず立ち寄ったりする存在だ。敬老会や自治会の弁当や折り詰めの注文も多い。料理長の倉原恵子さん(66)は「家庭料理の延長だが、みんなで味見をしてより良い味に仕上げ、喜ばれている」と笑顔だ。

 メンバーで副会長の渡辺香代子さん(64)は「つえを突いて来る高齢者が食堂で食事をし、トイレットペーパーを置いてほしいと頼んでこられた。地区にはお店がなくなり、高齢者にとってはいよいよここしかない」と責任を感じる。

 2月からは“出向く”食堂を開始。歩いて来られない高齢者のために、5人が集落の公民館などに弁当を持って行き一緒に食べる取り組みも始めた。メンバーにとって運営は“地域貢献”ではなく、「地域に根差している」感覚だという。

 経理担当の渡辺里美さん(62)は「地域や家族の理解があって続けられている。やってあげているという感覚ではなく、学ぶことが多く自分の財産になっている。人生の大きなプラスになっているのよ」と強調する。

 メンバーの奮闘に、地域の住民は感謝の気持ちを抱く。緒方町づくり協議会の事務局で農家の後藤和吉さん(63)は「農村部で最後まで生きていくには買い物、食事と、人の交流が必要。なごみ茶屋はそれを担ってくれている」と話す。 

 ただ、5人しかいないため、運営は人繰りが課題だ。工藤さんは「苦労も多いけれど、地域に育てられてきた。自分たち自身も輝きながら、地域の人の生きがいや居場所であるこの拠点を守っていきたい」と今後を見据える。
 

<ことば>小さな拠点


 「小さな拠点」は小学校区などを単位とし、買い物や医療、福祉、交流の場、金融機関など生活に必要なサービスを集め、地域の暮らしを守る場所。住民組織らが運営し、そこに行けるように集落間の交通手段を確保する。内閣府によると、全国533市町村に1867カ所あり、年々増えている。来年度から始まる地方創生の5カ年計画「まち・ひと・しごと総合戦略」ではJAと小さな拠点の連携が重要視されている。内閣府は「なごみ茶屋」の取り組みは先駆的で、モデルケースとしている。2月26日に内閣府が開く「JAと小さな拠点」フォーラムでは、工藤さんらが活動報告を行う予定だ。
 

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