19年和牛子牛取引 需給見据え持続策探れ

 2019年に全国の家畜市場で取引された黒毛和種の子牛(和牛子牛)は、頭数、価格ともほぼ前年水準を維持した。だが実情は、好調だった前半から一転し、夏以降は枝肉価格と連動して下げ局面に入った。需給動向を見据え、肥育産地とも連携し、持続できる子牛生産の方法を探るべきだ。

 日本農業新聞は全国102市場を対象に、19年の和牛子牛取引実績を集計。頭数は、6年ぶりに増加に転じた前年を0・1%下回り、1頭平均価格は前年比0・5%高となった。

 和牛子牛は増頭基調にある。農水省調べでは、19年の繁殖雌牛の飼養頭数は前年より2%多い。前年水準の出荷頭数は、繁殖雌牛の自家保留や、繁殖肥育一貫経営への移行が増えたためだ。だが、肥育経営を採算割れさせる高値が続いた子牛価格は、夏から下がり始めた。牛肉の最需要期で、同時に牛舎の補充で最も子牛取引が活発化するはずの12月に前月相場を下回り、関係者に衝撃を与えた。

 同月の和牛枝肉価格は例年の最高値どころか、年間最安値と「異例の展開」(東京食肉市場)。今年に入っても枝肉、和牛子牛ともに浮上していない。枝肉価格の急落で、肥育農家に高い子牛を買う余裕はない。

 枝肉価格が今後、大きく反転するとは予想しにくい。大型自由貿易協定(メガFTA)で安価な牛肉の流通が拡大。年明けから米国産を値下げし集客の目玉にする大手スーパーが増えた。昨年10月の消費税増税は、消費者の節約志向を加速させている。健康を意識した赤身肉志向も和牛消費に影を落とす。

 和牛子牛価格も、しばらく弱い状況が続きそうだ。その中で、持続的な子牛生産の方法を探る必要がある。市場別に見た年間取引実績にヒントがある。価格面では、優良血統の子牛が多い市場で好成績だった。人気の「白鵬85の3」を擁する鳥取県中央家畜市場では、1頭価格が前年比1・7%高の88万円強で、価格順位の3位に浮上した。ブランド和牛の需要は根強く、それに見合った子牛の供給は今後も欠かせないはずだ。

 優良な和牛子牛をコストを削減しながら増産するには、国の畜産クラスター事業を最大限活用したい。宮崎県が参考になる。同県の7市場が価格の上位20位以内で、いずれも前年を上回った。取引頭数は1市場を除き前年割れだが、産地が縮小したわけではない。19年の県内の繁殖雌牛頭数は前年より3%多い。農家やJAが同事業を活用し、キャトルセンターや牛舎を整備。繁殖雌牛の数は最少だった15年から1割以上伸びた。地域内で協力し合った結果だ。

 国は19年度補正予算で同事業の規模要件を緩和し、中小規模の畜産経営支援を拡充した。地域の実情に沿って活用すべきだ。地域資源を最大限に活用する放牧の導入も、コスト削減に向く。和牛産地が連携し、将来の生産の姿を早急に探りたい。
 

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