芭蕉の「おくのほそ道」の「わび・さび」を英語で見事に表現した。生粋の日本人以上に日本の美を深く理解した証しだろう

 芭蕉の「おくのほそ道」の「わび・さび」を英語で見事に表現した。生粋の日本人以上に日本の美を深く理解した証しだろう▼日本文学研究者のドナルド・キーンさんである。昨年96歳で鬼籍に入り、きょうが1周忌。手紙に用いた漢字の署名にちなみ「黄犬(キーン)忌」と呼ぶ。先月、養子の誠己さんが明らかにした。業績をたたえる記念財団も設立する▼源氏物語や枕草子など日本を代表する古典を海外に紹介し、近代文学の三島由紀夫や安部公房などとも親交を深めた。日本の歴史に関する驚くほどの知識。さしもの司馬遼太郎も対談を持ち掛けられ、「それほど憂鬱(ゆううつ)なことはありません」と、身構えるほどだった。2人の対談をつづった『日本人と日本文化』(中公文庫)にある▼東日本大震災をきっかけに日本人になる決意をした。戸籍上は「キーン ドナルド」とし、通称には「鬼怒鳴門」の漢字4文字を当てた。震災から1年後、日本国籍を取得した際の東京都内での会見で、街に必要のない明かりが多いことを指摘しながら、「もう忘れているのではないか」と、皮肉交じりに語ったという。大震災・原発事故から9年。東京はひときわ明るさを増す▼地方を置いてきぼりにした繁栄に「わび・さび」はあるか。当て字の「鬼怒」に“いさめ”が浮かぶ。
 

おすすめ記事

四季の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは