タイTPP交渉 国産への脅威は明白だ

 タイの環太平洋連携協定(TPP)加盟を日本が強く後押ししている。8月にも加盟交渉の立ち上げが決まりそうだ。タイは農産物の大輸出国であり、加盟は大きな脅威となる。国内農業の生産基盤立て直しが正念場にあるもかかわらず、政府がその足を引っ張るようなことがあってはならない。

 タイは日本の農産物輸入額で4番目に多い。2018年は4397億円に達した。特に鶏肉調製品は1位で1653億円。鶏肉もブラジルに次いで2位で431億円になる。潜在的な脅威はこれにとどまらない。

 日本はタイと経済連携協定(EPA)を結び、07年11月に発効済み。鶏肉は骨なし肉の関税を11・9%から8・5%に下げ、鶏肉調製品は6%を3%に削減した。交渉では米、砂糖、でんぷんなども焦点になったが、農業協力を進めることで押しとどめた経緯がある。

 とはいえ、タイからの輸入額は大きく膨らみ、発効前の06年から18年までに1238億円増えている。鶏肉調製品の輸入額は2・8倍。農産物輸入全体に占めるタイのシェアは4・8%から8・8%に拡大している。

 その状況で浮上したタイのTPP加盟である。17日のタイのソムキット副首相と西村康稔経済再生担当相との会談で、現実味が一気に増した。タイ側は4月に国内手続きを終わらせる意向で、8月にも加盟に向けた各国との交渉入りが決まる。

 TPPでは、鶏肉、鶏肉調製品とも関税は撤廃。米は、輸入実績があるオーストラリアに、ミニマムアクセス(最低輸入機会)と別に輸入枠を設けた。タイ側は当然、2国間EPAより有利なこうした扱いを求めてくると思われる。タイは日本に米を現状37万トン輸出するが、生産量は2000万トン(精米ベース)に達し、そのうち1000万トン程度を輸出する力を持つ。

 加盟交渉へと局面が進めば、農産物が焦点になるとみられる。西村氏は「守るべきものは守り、攻めるべきは攻める」と言うものの、「スムーズに交渉開始ができるよう、全面的に支援していきたい」とタイの加盟に極めて前のめりだ。

 日本政府は新規加盟を急ぐ前に、TPPで積み残した課題を片付けなければならない。乳製品の輸入枠縮小や、牛肉のセーフガード(緊急輸入制限措置)発動基準の見直しなどだ。米国が離脱した分を修正しないまま日米貿易協定も発効し、日本農業への打撃が膨らむ恐れがある。政府は調整を各国に働き掛けるとするが、輸出国にとっては一度手にした優位を手放すことであり、難航が予想される。まず、その対応に全力を尽くすべきであり、新規加盟はその後だ。

 相次ぐ大型貿易協定の発効で、日本農業はかつてない難局にある。食料・農業・農村基本計画の改定論議で、生産基盤の強化に本腰を入れようという機運がようやく高まってきた。拙速外交は絶対に許されない。
 

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