食品ロス削減方針 食を見直す国民運動へ

 食べられるのに捨てている食品ロスの削減に向けた政府の基本方針案がまとまった。農家には規格外農産物の有効利用などを求めた。必要なのは一人一人が食べ物を無駄にしない意識の醸成だ。農家やJAは、消費者を巻き込み地域の取り組みをけん引してほしい。食と農を見直す国民運動として広げよう。

 飽食の影で食品ロスは大きな社会問題となっている。日本の食品ロス量は643万トン。大型10トントラックで約1760台分を毎日廃棄している計算だ。一方で、食料自給率はカロリーベースで37%(2018年度)と過去最低水準。大量の食料を輸入しながら、食べられるのに捨て続けている食品も大量だ。

 世界に目を向ければ、人口が急増している。国連は17年の約76億人から50年には約98億人になると試算。国連食糧農業機関(FAO)は世界で飢えや栄養不足で苦しんでいる人を約8億人いると推計する。一方で日本は、世界の食糧援助量(約380万トン)の1・7倍の量を捨てている。

 こうした情勢を受け、食品ロス削減推進法が昨年10月に施行。具体的な取り組みを、農相や環境相ら関係閣僚と有識者でつくる食品ロス削減推進会議が基本方針案として示した。農林漁業者や食品関連事業者、消費者の役割と行動を明確にした。

 農林漁業者や食品関連事業者には①規格外や未利用の農林水産物の活用②食品製造時に生じる食品の端材や型崩れ品の有効活用③保存容器包装の工夫などによる賞味期限の延長④消費実態に合わせた容量の適正化──などを求めた。規格外や未利用農産物の活用は、農家所得の向上につながる可能性がある。総菜など農産加工品に利用する取り組みは既に始まっている。広がりに期待したい。

 食品ロス削減の意義として基本方針案は、家計負担や地方公共団体の財政支出の軽減、二酸化炭素(CO2)削減による気候変動の抑制、食品の生産や廃棄に関わるエネルギーや労働力などの無駄の削減を挙げた。農業生産や食品製造の持続性の確保にもつながる。

 また、「いただきます」「ごちそうさま」の言葉には、「﹃食べ物﹄やそれを育んだ自然の恵みや作ってくれた人への感謝の気持ちが込められている。﹃和食﹄も食材を余すところなく使う持続可能性の高い食文化である」と指摘。「食品ロス削減の取り組みは、日本の食に関わる食文化再確認にすることにつながる」と訴える。真の目的はここにあると捉えるべきだ。

 政府は基本方針を3月末に閣議決定する。それを基に、都道府県と市町村が、地域の特性を踏まえて食品ロス削減推進計画を立てる。農家やJAには計画の策定段階から積極的に加わってほしい。大きな流れとするには地域ぐるみの取り組みとすることが重要だ。まず、自分たちに何ができるかを考えることがスタートとなる。

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