果樹振興基本方針 生産の基盤強化を急げ

 今後の果樹農業の方向性を示す新たな果樹農業振興基本方針の骨子案を農水省が示した。需要減少を上回る生産減少を受け、供給過剰に対応した生産抑制的な施策から生産基盤を強化する施策に転換することが柱。農家の減少や高齢化が深刻化する中、生産基盤の早期立て直しに効果的な施策が必要だ。

 基本方針は、骨子案などを踏まえ取りまとめ、同省の審議会の3月末の答申を経て正式に決定、施策に反映する。

 骨子案では、人口減少の本格化で国内総需要が減少する以上に、生産現場の人手不足や自然災害の頻発などで、需要減を上回って生産減が進んでいると情勢変化を分析。従来の果樹政策は供給過剰を前提とした需給安定が主な目的だったが、供給力の回復に向けて生産基盤を強化する施策に大きくかじを切る。

 果実の生産減は深刻だ。基幹品目であるミカンとリンゴの生産量はピーク時のそれぞれ2割、7割にとどまる。同省は毎年、消費動向などを参考にミカンとリンゴの適正生産出荷見通しを公表する。近年は、同見通しの適正生産量を生産量の実績が下回る状況が続いている。価格低迷時に生果を加工原料用に仕向ける緊急需給調整対策特別事業もミカンは2012年、リンゴは09年以降発動しておらず、供給過剰の状態ではない。

 基盤強化策として骨子案では①省力樹形やスマート農業技術による労働生産性の向上、特に水田の活用や基盤整備と一体的な省力樹形などの導入②園地・樹体を含めた次世代への円滑な経営継承③苗木・花粉などの生産資材の安定確保──などを挙げた。また大規模自然災害や鳥獣・病害虫被害などのリスクへの備えとして、収入保険や果樹共済といったセーフティーネットへの加入推進を盛り込んだ。

 生産基盤の要は人と農地であり、積極的に確保すべきだ。JAによっては、後継者不在の樹園地を新規就農者や担い手に円滑に継承する取り組みを進める。こうしたことを点から面に広げ、持続性のある果樹産地づくりを推進する必要がある。

 消費拡大も課題だ。1人1日当たりの果実摂取量は104グラム。10年前と比べて全世代で減少し、50代の落ち込みが大きい。近年伸びるカットや冷凍、フルーツケーキなどの需要に応えて味や簡便性、外観を追求した果実の強化が求められる。加工対策では「裾物」の活用だけでなく、加工業者との契約生産栽培や加工需要に応じた「稼げる加工原料」の生産・供給拡大の重要性が高まっている。

 果樹は条件不利な傾斜地での栽培が多く、規模拡大や人の確保は簡単ではない。果樹の販売農家で60歳以上の割合(15年)は77%、70歳以上は42%と高齢化は深刻だ。苗を植えてから成木になるまで数年間かかる品目も多い。生産基盤強化に向け、即効性のある対策と中長期的に効果が現れる対策を整理し、農家を支援することが重要だ。
 

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