[あんぐる] 願い背負った命 震災9年 復興へ誕生相次ぐ JA和牛ファーム福島さくら(福島県田村市)

朝生まれたばかりの子牛を抱き、顔をほころばせる吉田農場長(福島県田村市で)

 東日本大震災から11日で9年。福島県田村市で東京電力福島第1原子力発電所事故で落ち込むブランド和牛「福島牛」再建の取り組みが進む。中核を担うのはJA福島さくらの子会社、JA和牛ファーム福島さくら。昨年3月に「キャトルブリーディングステーション(CBS)」が稼働してから、20頭の新たな命が誕生した。生産基盤の維持・拡充、繁殖農家戸数の回復に向けて関係者の表情は明るい。

 2月中旬。朝、生まれたばかりの子牛が同施設の牛舎で跳ね回っていた。母牛にじゃれ付いたり、母乳を飲んですぐに寝てしまったりと愛らしい姿を見せた。「これまで生まれた子牛は事故がなく、生育も順調。ようやく軌道に乗り始めた」と、農場長の吉田千代美さん(57)が目を細める。

 同社は、CBSを活用して和牛の繁殖、農家から預かった子牛の育成、不妊牛への種付けなどを行う。CBSは、母牛を飼養する和牛繁殖牛舎や子牛用の哺育牛舎、農家から預かった牛を育てる預託牛舎など四つの牛舎で構成し、敷地面積は1万736平方メートル。妊娠牛を見守るカメラや発情発見器などの最新設備を備える。現在は、繁殖雌牛など128頭を飼養管理する。

 預託事業では 農家5戸から子牛9頭を預かる。市内の浦山陽子さん(56)は「忙しい時期に子牛を預けられて助かる。育った牛は 見た目よりも体重があり、せり価格も良かった」と喜ぶ。
 
市内の山あいに建つCBS

 同市を含むJA管内の「たむら地区」は震災前、県内有数の和牛産地だった。2010年の繁殖農家戸数は788戸だったが、原発事故に伴う子牛価格の下落などで16年には459戸にまで減った。「衰退に何とか歯止めを掛けたい」とJAがCBS建設に乗り出し、昨年完成させた。

 地域からは震災を乗り越えるシンボルとして、期待を集める。

 同社の社長を務めるJAの橋本剛一専務は「この施設でもう一度、福島牛の産地をよみがえらせる」と言い切る。(富永健太郎)

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