[新型コロナ] 農業関係者にも感染拡大 何より予防… 現場奔走 無念の廃乳 対策計画奏功

 新型コロナウイルスの感染が広がる中、一部の農業関係者やJA職員が感染し、事業に大きな影響が出ている。感染拡大を防ぐため生乳廃棄を決断した酪農家もいる。一方、感染者が出た場合のBCP(事業継続計画)の策定で被害を最小限に抑えるケースもあり、万が一の場合に備えた準備が欠かせなくなっている。

 東日本のある観光牧場では、6日に従業員の1人が新型コロナウイルスに感染した。乳牛30頭の他、馬10頭などを飼育し、カフェなども経営。感染者は畜舎に出入りしないカフェ担当だった。濃厚接触者となった経営主の農家(68)と妻、他の従業員4人は検査では陰性だった。

 現在は車の出入りをさせていないことや他の酪農家に風評被害で迷惑を掛ける心配があるため、集乳はしていない。搾乳して廃棄処分する日々だ。農家は「地域に迷惑をかけてしまう。食欲がなく心が折れた」と落胆する。

 発覚日は金曜で消毒会社に相談する暇がなく、土日を挟み、9日朝に保健所に相談。12日に消毒してもらう。消毒などを事前に想定しておらず、1週間近くかかる。

 畜舎はカフェと100メートル離れており、普段通り農作業をしているが、農家も妻も従業員も、外出は控えている。現在、乳製品やアイスクリームなどの製造も全て停止。飼料や宅配物は、牧場入り口付近まで運んでもらい、取りに行く。

 地元の保健所によると、感染した従業員が触った可能性のある場所の消毒徹底は指導するが、車両の出入りは指示しておらず、生乳廃棄は農家の苦渋の決断だ。農家は「廃棄の無念さは言葉にならない。本当に参った」とこぼす。営業再開を目指す。

 経済的損失も大きく、客足が戻るかどうかの見通しは全く立てられないが、励ましのメールや電話が相次ぎ、涙が出る思いだという。農家は「農家と従業員は消毒を徹底し、人が密集する場所に出入りしないことを肝に銘じるしかない。万が一起きた時の対応が必要だ」と語る。

 北海道のJA道央では、職員が2日の帰宅後に発熱し、6日に陽性が明らかになった。陽性確認後、JAは役員らが会議を開き、6日午後2時に職員が勤務していた北広島支店を閉鎖した。

 JAは2009年の新型インフルエンザ発生を受け、BCPに対応策を明記。日頃から本支店に消毒液を置くなどしてきた。一方、BCPは非常時の業務継続が前提だったため、役員と協議し、店舗閉鎖や職員の自宅待機なども決め、職員に文書で周知。BCPの策定で職員への伝達もスムーズで、今回の対応もBCPに沿った形で進めた。

 職員の陽性が分かって以降、保健所からの助言も受けながら同支店のパソコンや机、ドアノブなどをアルコール消毒。感染した職員以外の職員は15日まで自宅待機にして、JAがせきの有無や体温などを毎日確認している。同支店は10日に再開し、他支店の職員が業務に当たっている。
 

食品介した感染例なし


 JA全中の調査では、「感染者が出た場合の業態別のガイドラインの早期策定、周知」を求める声が現場から上がっている。農水省は「食品を介して感染した例はなく、牛乳は出荷しても問題ない。畜舎の消毒前に集乳する車両や飼料会社の車などが入ってよいかどうかなどは保健所の指導に従ってほしい」と説明する。同省は、農家らが感染した場合の対応に関するガイドラインを、今週中に公表する見通しだ。
 

花や牛乳率先消費 JA長野中央会など支援運動


 JA長野中央会とJA全農長野、JA長野県農政対策会議は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響などで農業所得に影響が出ている県内生産者を支援する活動を始めた。JAグループと行政が連携し、県産花きや牛乳の消費拡大運動を展開する。

 花き農家を応援するため、「県産花き一人一束購入運動」を進める。JA長野県グループの役職員と長野県職員が生産量全国1位のアルストロメリアの花束を購入する。酪農家を応援するため、牛乳の購入運動にも取り組む。アルストロメリアと牛乳は現在、注文の取りまとめを始めており、3月下旬に届ける。

 県と連携して、購入した花束を持って歩く「フラワーウオーク」を予定している。また、テレビ局の番組内でのデコレーション用や視聴者プレゼントなどに花を提供し、需要を喚起する。

 政府による自粛要請や全国一斉休校を受けて、イベントの中止や延期、観光客の減少、学校給食の休止などで、農産物の需要が落ち込む。3月は桃の節句や卒業式、彼岸など花きの需要期だが、販売単価が下落。給食用牛乳で消費される県内の生乳も余剰となっている。いずれも農家経営への影響が懸念され、消費拡大に向けて購入運動を展開することを決めた。

 長野中央会・各連合会の雨宮勇会長は「今こそ協同運動の力を発揮する時。地産地消の観点からも消費者の理解を得ながら、県内農業の維持・振興を図る」と強調する。

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