[新型コロナ] 「しんどい時こそ」農、食、つながり… コロナに負けるな!

雨の中を遊びに来た大智君(手前)と、見守る磯沼代表。平日でも子ども連れが目立つ(東京都八王子市で)

「元気」を届け 届けられ


 新型コロナウイルスの渦中で社会全体が暗い雰囲気の中、“ほっこり”とする取り組みが農業や農村で広がっている。休校で家にこもりがちな小学生らのストレス解消の場として酪農教育ファームを続ける酪農家や、農家にマスクを届ける消費者、共働きの家庭と農家を救おうと格安でランチを提供する若者……。どれも、感染拡大に最大限考慮しながら、身近な誰かや地域への思いが原動力となっている。
 

居場所提供、子が歓声 酪農教育ファーム 東京都八王子市


 3月半ば。東京都八王子市の牧場、磯沼ミルクファームに子どもたちのにぎやかな声が響く。学校が休校後は、家でテレビを見て過ごすことが多いという小学校2年生の手塚大智君(8)は、放牧地を元気いっぱいに走り回る。母の千鶴さん(41)は「とても癒やされる。体力が余っているので、こういう場所は本当にありがたい」と感謝する。

 牧場では、コロナウイルスの感染拡大が問題になる中、葛藤もあった。牧場を開放し続けるのか、閉めるのか。酪農教育の場の提供を20年以上続ける中で初めての経験。学校が一斉休校になったことを受け、スタッフで話し合った。不特定の人が訪れるため、万が一でも発生してしまうリスクを心配したからだ。

 悩んだ末に、アルコール消毒や手洗いを徹底することで受け入れを決めた。屋外の公園は開いていることを考慮した。磯沼正徳代表は「牧場公園で子どもが気分転換できればと思った。今こそ牛のいる空間の中で、命と向き合う酪農教育の意義がある」と考えた。

 現在は、子どもだけでなく大人も牛を見に来る。平年より訪れる人が多いという。磯沼代表は「食料生産だけでなく、農業には人の心を癒やす、健康にすることも含め多面的な機能がある。こうした農業の役割は、社会がしんどい時期だからこそ多くの人に知ってほしい」と願っている。
 

地場産使い格安弁当 地域おこし協力隊 鹿児島県長島町


 小中学校の一斉休校の影響から学校給食がなくなる中、若者が行動を起こした。

 鹿児島県長島町で地域おこし協力隊として活動する甲斐友也さん(26)。町内の学校の休校に合わせて3日から弁当販売を始めた。普段、食べ物付き情報誌『食べる通信』の編集長をしながら、古民家で食堂を経営する甲斐さん。利用客には町内の母親が多い。「子どもの世話のため、起床が1時間早くなったなどの声を聞いた。少しでも力になりたいと思った」と甲斐さん。子どもに町内産の食材を食べてもらう機会でもあることから、弁当の食材は全て町内産にした。

 料金は1食300円と格安に設定。1日50食を上限に販売し、10~20個の注文が入っている。
 

顧客がマスク70枚 トマト農家 長崎県南島原市


 マスクの高額転売をする人もいれば、善意で農家にマスクを送る消費者もいる。

 長崎県南島原市で、子ども4人を育てながらトマト2ヘクタールを栽培する中村みずきさん(36)は、贈られたマスクに感激している。中村さんはトマトを買ってくれる全国の消費者とインターネット交流サイト(SNS)でつながっている。そのサイトでマスク不足が話題になった。中村さんは何気なく「子どもたちがマスクがないと、スクールバスに乗れない」と嘆いた。すると、3人からマスク計70枚が届いた。そこにはメッセージが添えられていた。「おいしいトマトが食べられるのは、農家の健康があってこそだから使ってね」。胸が熱くなった。

 「トマトの売買だけじゃない関係ができたのがうれしい。贈ってくれた人にも孫がいて、みんなマスクがなくて困っているのに。農業を頑張ろうと思えた」と、感謝の気持ちでいっぱいだ。
 

岐阜県飛騨市市役所職員 給食の牛乳消費「率先」


 岐阜県飛騨市では、市の職員有志が牛乳の消費拡大に取り組む。3月の給食用に出荷を予定していた牛乳約7500リットルが行き場を失ったことや、観光客の減少などが続くためだ。有志で牛乳のまとまった購入に取り組む他、地元牛乳の消費を呼び掛ける。

 市の会議で出していた茶も、今は牛乳にした。さらに「飛騨市まるごと職員食堂キャンペーン」と銘打ち、職員は飲食店での昼食や出前の注文などで外食を増やす取り組みも始めた。相次ぐイベント中止や観光客の減少、自粛ムード。同キャンペーンを中心となって呼び掛ける同市生涯学習課の吉本優さん(29)は「消費が低迷している地域経済を少しでも元気にしたい」と願う。
 

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