飼料米の目標下げ 増産支援の手 緩めるな

 政府は、食料・農業・農村基本計画で掲げる飼料用米の生産努力目標を現行の110万トンから70万トンに引き下げる方針を示した。飼料用米への支援が弱まる引き金になる懸念がある。主食用米の需給安定などに飼料用米の増産は不可欠であり、国は力強い支援を継続すべきだ。

 2015年3月策定の現行基本計画の目標は「25年度に110万トン」。月内に閣議決定する新たな基本計画では、「30年度に70万トン」に下方修正する方針だ。

 なぜか。主食用米の転作について農水省は、これまで飼料用米を中心に進めてきたが、今後は、麦・大豆と共に加工・業務用野菜や果樹といった高収益作物にも力を入れていくためと説明する。現実的な水準に目標を見直すという理由もあるようだ。飼料用米の生産量は16年の51万トンをピークに伸び悩んでいる。18年は43万トンにとどまり、110万トンとの開きは大きい。

 だが目標の引き下げには不安を抱かざるを得ない。飼料用米への政府の手厚い助成が後退する「アリの一穴」になりかねないからだ。

 同省は転作助成金である「水田活用の直接支払交付金」で、飼料用米に10アール当たり最大で10万5000円を助成。これに対して財務省は削減を求めてきた。18年には同省の財政制度等審議会が、単価水準を実質削減したり、助成対象を多収品種に絞り込んだりするよう提言している。農水省が削減圧力をはね返す根拠としてきたのが110万トンという高い目標だ。現行基本計画にはこの目標と共に、「目標の確実な達成に向けて必要な支援を行う」と明記している。

 目標が下がれば削減圧力が一層強まる恐れがある。同省は20年度予算案で、飼料用米をはじめ主要な転作作物の助成金単価を維持する方針だが、その先も維持できる保証はない。

 JA全中の中家徹会長は、基本計画を論議した10日の食料・農業・農村政策審議会企画部会で、飼料用米の目標引き下げに懸念を表明。「今後とも増産を強力に進める姿勢を示してほしい」と述べ、手厚い助成が後退しないよう要望した。

 19年産主食用米の生産量は726万トン。20年産の適正生産量(708万~717万トン)の達成には9万~18万トン転作を増やす必要がある。また、年間約10万トンの消費の減少も続いている。

 主食用米の需給と価格の安定とともに食料自給率の引き上げに向けて飼料自給率を高めていくためにも飼料用米の増産は欠かせない。同省が飼料業界の主要4団体に行った調査では、飼料用米の年間使用可能量は約120万トンに上り、増産の余地はまだあるとの結果が出ている。

 自民党は昨年7月の参院選の公約に飼料用米などの本作化に向けた「水田フル活用の予算は責任を持って恒久的に確保する」と明記した。この約束を忘れることなく、同党には責任を持って必要な予算確保に取り組んでもらいたい。

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