やさしくね やさしくね やさしいことはつよいのよ

 「やさしくね やさしくね やさしいことはつよいのよ」。彼女の生き方の全てが、この言葉に詰まっている▼宮城まり子さんが亡くなった。享年93。女優の肩書を捨て、福祉活動に生きた。半世紀前、私財を投げ打ち、体の不自由な子どもたちの養護施設「ねむの木学園」を創設した。冒頭の言葉を園に掲げ、教育の道しるべとした。1年ほど前、彼女に話を聞いた同僚によると、最初は、売名批判など風当たりが強かったという▼支えになったのが敬愛する室生犀星の詩だった。〈わがゆくみちはいんいんたり/やつれてひたひあをかれど/われはかの室生犀星なり〉。手探りの運営。資金難。挫折もあった。先の見えない暗闇の中で、この詩の一節をそらんじた。「われはかの宮城まり子なり」。そう言い換えて、自らを鼓舞したという▼育てることは、自分も育つことだった。子どもたちに教えられ、生きる力をもらった。歌に絵にダンス。一人一人に表現の場をつくり、共に泣き笑いした。違いは個性となり、世界とつながった。その作品は見る人の心を揺さぶり続ける▼最愛のパートナー、作家の故吉行淳之介さんと、最後まで活動をやめないと約束を交わした。天に召されたが、子どもたちの心の中では「おかあさん」として生き続ける。いつまでも。

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