[ゆらぐ基 問われる実効性](1) 輸入依存の果てに 海外リスクが顕在化

ルートの金井代表は国産の安定供給へ野菜を保管して需給調整を担う業者へ支援を望む(千葉県八街市で)

 「中国の加工場も港湾も止まった。注文分のタマネギは入らない」。中国で新型コロナウイルスが猛威を振るっていた2月上旬。農産物の仲卸業者・ルートの金井峻亮代表の元に仕入れ先の輸入業者から急報が届いた。感染拡大防止のため現地の人の移動に制限がかかり、仕入れを直撃した。
 

コロナ禍で物流が停滞


 中国産のむきタマネギを毎週50~80トン仕入れ、中食や外食に販売する同社。10キロ入り段ボール箱5000箱を常時保管する倉庫が、一時は空になった。取引先への対応に追われ、2月の収益は半減した。

 中国産タマネギの年間輸入量は28万トン(2019年)。20年前に比べ3割増だ。国内流通量の2割を占める。このうち7割強が一次加工したむきタマネギで、長期保存できる真空パック包装が普及する。簡便性や保存性を武器に「拡大する外食や中食需要に食い込み、新しいマーケットを築いた」(輸入業者)。

 新型コロナ禍で外食業者などにタマネギを納入する業者は対応に追われた。当時、国産は潤沢で東京市場の価格は中国産を下回り、国内産地には業者の問い合わせが相次いだ。しかし、「国内の皮むき加工体制が十分でなく要望に追い付かない」(産地関係者)ため「国産への転換は一部だった」(輸入業者)。中国産に市場を奪われた結果、素材は十分にあるのに、急な事態に応え切れないという課題が残った。

 輸入停滞は早期に終息したが、金井代表は「もし長期化していたら、どうなっていたか。輸入物を扱うリスクを痛感した」と振り返る。物流の停滞はタマネギにとどまらず、2月第2週(2~8日)の中国産野菜の輸入量はネギやニンジンなど複数の品目が前年同期比8、9割減となり、流通は混乱した。
 

基本計画も危惧を明記


日本の食料自給率は37%(18年度)で、海外に大きく依存する。環太平洋連携協定(TPP)、日欧経済連携協定(EPA)、日米貿易協定といった大型貿易協定が相次ぎ発効し、グローバル化が進展。食料の調製・加工を海外拠点で行うケースも増え、国際的なサプライチェーン(物の調達・供給網)が進む中、自然災害や伝染病、輸送障害などのリスクは国外に広がっている。食料安全保障の確立は、食料の安定供給に欠かせない課題だ。

 資源・食糧問題研究所の柴田明夫代表は「安い食料をいくらでも海外から調達できた時代は終わった」と断言し、不慮の事態でも安定供給を担保する生産基盤の再構築を提唱。「今見つめ直さなければ、つけは生産者にとどまらず、消費者が払うことになる」と警鐘を鳴らす。

 「新型コロナウイルス感染症などの新たな感染症の発生による輸入の一時的な停滞など、我が国の食料の安定供給に影響を及ぼす可能性のある要因(リスク)が顕在化している」。同省が19日に示した次期食料・農業・農村基本計画案に盛り込まれた一文だ。国際情勢の変化や頻発する気象災害など、食料安全保障を脅かすリスクが増していることに、同省も危機意識を抱いている。
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 食料安全保障が揺らいでいる。新型コロナウイルスで農産物輸入が一時的に停滞した他、農業産出額で4割を占める中山間地の荒廃に歯止めがかからないなど、食料安定供給のリスクが高まっている。一方、多様な主体で農村の再構築や、目先の利益だけでなく10年、20年先を見据えた持続可能な農業に挑戦する動きも始まっている。現場を追った。

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