五輪 来夏に延期 安全・安心を最優先に

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今夏の東京五輪・パラリンピックの延期が決まった。延期は1年程度とし、来年夏までに開くという。追い込まれての決断だが、アスリートファーストと観客の安全・安心を考えればやむを得ない。課題は山積する。まずは感染終息に向け国際協調を呼び掛けたい。

 迷走の末、24日の急転直下の決定だった。予定通りの開催に固執した国際オリンピック委員会(IOC)が、延期へとかじを切ったのが22日。その時点で4週間以内に結論を得るとしたが、既に各国のオリンピック委員会や選手たちの反発で、延期への外堀は埋まっていた。新型コロナウイルスの世界での急激な拡大は既に顕在化しており、決断は遅過ぎた。

 日本政府も何としても「中止」だけは避けたいと腐心。「復興五輪」を掲げ、自らの「政治的レガシー(遺産)」となるだけに安倍晋三首相にとっても「延期」しか道は残されていなかった。安倍首相自らバッハIOC会長とトップ会談し、1年程度の開催延期や「東京2020」の名称継続を提案。直後のIOC臨時理事会での承認の流れを作った形だ。

 いわば開催国として、延期を主導することで政治的威信を保った格好だ。だがこの間、五輪開催を優先するあまり、新型コロナウイルスの感染対策が後手に回ることはなかったか。あるいは政権戦略と絡める思惑はなかったか。検証が必要だろう。

 問題はこれからだ。夏冬通じて近代五輪の延期は初めてだけに、解決すべき課題は山積している。最大の懸念は、新型コロナウイルスが世界的に終息しているかだ。感染が収まり、ワクチンが広く流通している状況にあるか。安全・安心の確実な担保が開催の大前提になる。

 再延期が現実的でない以上、背水の日程調整となる。国際的なスポーツ大会との調整を急ぎ、可能なら酷暑を避け、5、6月の開催を検討してはどうか。選手選考の在り方も早急に詰め不安を取り除くべきだ。

 各国の選手を受け入れる自治体への財政支援、会場の再確保や施設の維持費、組織委員会の人件費、選手村のマンション改修・引き渡し、ボランティアや警備の見直しなど財政負担は膨大となるが、官民挙げ課題解決に取り組まねばならない。

 コロナ不況に五輪延期が重なれば、国内経済はさらに失速しかねない。インバウンド(訪日外国人)を見込んだ農泊需要の落ち込み、和牛や花卉(かき)などの価格低迷は顕在化しており、救済策も必要になる。一方で「食のレガシー」として和食を売り込む販売戦略は、引き続き強化すべきだ。国際的な農業生産工程管理(GAP)への認証も着実に進めたい。

 この機会に五輪も「商業主義」「勝利至上主義」を改め、「友情・連帯・フェアプレー」を理念とするオリンピック精神に立ち返る時だ。

おすすめ記事

論説の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは