地域おこし協力隊 地縁の後継者に期待 民俗研究家 結城登美雄

結城登美雄氏

 私は長年、東北地方を中心に800カ所ほどの農山漁村集落を訪ね歩き、その土地を生き抜いてきた人々から生産活動や日々の暮らしぶりなど、たくさんのことを学ばせてもらってきた。そこで近年、人々から聞かされることが多くなったのは「このままでは、この村、消滅するのではあるまいか」という不安の声である。

 その要因は少子・高齢化の進行で、人口が減り空き家が増え、老人単独世帯が多く、身近な商店がつぶれ、生活用品にさえ不自由するという。加えて体力に限界を感じ農業生産から退き、結果としてコミュニティーが薄れ、孤立感を感じている。
 

10年で5300人超す


 ただ、厳しい話だけではない。こうした現状にあらがうかのように村のあちこちで多様な活動をする若者に出会うようになったのも最近のことである。彼らは総務省が推進する「地域おこし協力隊」の隊員である。

 地域おこし協力隊とは何か。総務省の資料によれば「都市地域から過疎地域などの条件不利地域に住民票を移動し、生活の拠点を移した者を、地方公共団体が『地域おこし協力隊員』として委嘱。隊員は一定期間、地域に居住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこしの支援や、農林水産業への従事、住民の生活支援などの『地域協力活動』を行いながら、その地域への定住・定着を図る取り組み」である。この制度が発足したのは過疎地の限界集落化が指摘された2009年で、地域や集落の支援活動を若者の力でできないかと始まったものだ。初年度は全国で89人の応募しかなかったが、その後どんどん増え、10年後の19年は5349人にまで増えた。驚きの広がりである。
 

農村が人生の場


 私の住む宮城県にも129人の隊員が活動している。その中の自治体で最も隊員が多いのが、台風19号の洪水被害を受けた丸森町だ。23人が日々頑張っている。縁あって彼らに話を聞くことができた。なぜ応募したのかと。「経済主義が中心の都市社会は息苦しく異和感がある」「非正規雇用が4割近い日本の企業社会で、どんな人生や生活が送れるのか、疑問と不安がいっぱいある」「金や権力が支配する都市ではなく、自然に向かい合って生きる農山村を自分の人生の場にできないか。自然と共に生きてきたここの人々は、優しくて温かい。私もあんな人生を送りたい」と口々に言う。

 丸森の若者だけではない。全国に5000人いる隊員の約7割は20、30代。約4割は女性。任期終了後の約6割がそのまま同じ地域に定住し、さまざまな就業や就農をしている。それだけではない。この土地を生きてきた人々の思いに耳を傾け、その悩みを解決し、その願いを実現するためにさまざまな起業をしている。血縁の後継者ではないが、心通う地縁の後継者である。彼らに大いに期待したい。

 ゆうき・とみお 1945年山形県生まれ。山形大学卒業後、広告デザイン業界に入る。東北の農山村を訪ね歩いて、住民が主体になった地域づくり手法「地元学」を提唱。2004年度芸術選奨文部科学大臣賞受賞。

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