[新型コロナ] 直売所、農家が存在感 消費者の食支える

直売所「アグリハウス忠生」で地元の新鮮な野菜を買い求めに来た消費者。従業員も感染予防に気を配りながら、対応を続ける(8日、東京都町田市で)

生育を確認する農家の鎌田さん(右)と稲葉店長。端境期で野菜の出荷が少ないのが残念だという(同)

 新型コロナウイルスの感染拡大で7都府県に緊急事態宣言が発令される中、食料供給を担う農家や農産物直売所の存在感が各地域で増している。農業資材が手に入りにくいなど一部で支障が出ているものの、農家は田畑に向かい営農を続け、直売所は食卓を支える。消費者からは「直売所は地域のインフラだと改めて実感する」「医療関係者と同様、農家の存在がありがたい」などと感謝の声が相次ぐ。
 

変わらず開店 「安心」 東京・JA町田市


 東京都のJA町田市の直売所「アグリハウス忠生」。緊急事態宣言の発令から一夜明けた8日も、感染防止対策を徹底しながら開店した。農家は前日と変わらずに出荷をし、従業員はマスク着用して接客に励む。新型コロナウイルスの感染が急速に広がった3月末以降、野菜の多くは午前中で完売。店内で精米できる米の売れ行きは、平年比3~5倍の盛況ぶりだ。ただ、米を中心に在庫は十分にあり、同店は800種に及ぶ豊富な品ぞろえをなるべく切らさないよう体制を整える。稲葉信二店長は「地元農家が出荷し、近所の消費者が買い求める地域密着の直売所。遠くに出掛けるのが怖いという人も多い。直売所が平素と変わらず地域で開店していることが今、地域の人の安心感につながっている」と強調する。

 常連客の浅沼千鶴子さん(74)は「食べ物はあって当たり前のものではないんだと、改めて実感した。緊急事態宣言が出ても、野菜を変わらず作ってくれる農家と直売所に、心から感謝しているの」と、野菜を買い物かごに入れながら語った。親戚に呼吸器系の医師がいるという浅沼さん。買いだめはせず、外出は自粛しながらも、不安な日々を過ごす。「国難の時に、医者と農家は地域や市民のインフラで、大切な存在だと痛感した」と感謝の言葉を口にする。

 同市で1ヘクタールで野菜を栽培する鎌田勝さん(52)は、予定していた苗を販売するイベントが取りやめになり、育てていた苗の出荷の大半が見通せなくなるなど心労も多い。それでも「農畜産物はすぐに増産できない。緊急事態宣言が出ても農家がやるべきことは変わらない」と、管理作業の手を動かし続ける。新型コロナウイルスは、食料安全保障や食料自給率などの問題を表面化させたともいえる。鎌田さんは「もっと前から真剣に農業問題を考えておくべきだった」と訴える。

 野菜を栽培する田中貴子さん(42)も「農作業は、屋外での作業が多く、感染の恐れが少ない。それに農家は今、重要な役割を担っている」と、安定的な食料供給への思いで口元を引き締める。自宅などで過ごさなければならない子どもたちの心身の健康が気掛かりという。「外出自粛を呼び掛けられるのも、農家が変わらず作った野菜や米を自宅で食べることができるという前提があるからだと思う。こうした生活が長期化する中でも、野菜を作り続け、子どもたちの健康に寄与したい」と考える。
 

国産の価値 今こそ


 ウイルスの感染拡大を防ぐには三密(密閉、密集、密接)を避けることが重要とされている。農業はこうした三密を回避しながらできる仕事だ。また、各地の直売所は、外出自粛が続く中で食卓を支える役割を発揮。直売所の関係者や農家は「在庫は十分にあり、消費者は買いだめしなくても大丈夫」との注意喚起も続ける。

 埼玉県のJAさいかつ管内の直売所4店舗を統括するJA販売促進課の白井龍也課長は「米はあるのか、営業しているのかといった問い合わせがかなり多い。米は地場産なので、流通が滞ることはない」と言い切る。長引く小中学校などの影響で、学校給食用米の出荷ができなくなってしまった農家から、「直売所に持ってきてもいいか」という問い合わせも多い。農家にとっても消費者にとっても、直売所は重要な存在となっている。白井課長は「今こそ地域で消費を盛り上げたい」と意気込む。

 消費地に多くの野菜を供給する産地、福岡県久留米市。キュウリ50アールを栽培する八尋義文さん(52)は「作業はしっかり行い、多くの人が集まる会議など、自粛するところは自粛する。農家も一丸となって危機を乗り越えたい」と強調する。

 中国産農産物の輸入が大幅に減少したり、食料の輸出制限措置を導入する国もあったりすることから、「今回のことを機に、国内で食べ物を作る大切さに気付いてほしい。国産に目を向けて、買って食べてほしい」と消費者らに呼び掛ける。
 

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