農高生の将来 地域で多様な担い手に

 農業高校生の多くが農家出身ではないことが、中央畜産会の調査であらためて分かった。生産基盤がなく卒業後すぐに就農する者は少ない。しかし農外の出身でも農業に興味を持つ若者が多いことを示しており、多様な担い手や応援団を育てる好機だ。その対策を、農高関係者だけでなく地域で強化したい。

 中央畜産会が全国の農高を対象にアンケートをしたところ、畜産系の学科を持つ121校のうち農家出身ではない生徒が90%以上という高校が42%、70~89%が26%あった。生徒の7割以上が農外の出身という農高が3分の2以上ということになる。農家出身の割合が低い農高ほど、女生徒の比率が高まる傾向も見られた。

 農高を選んだことから農家出身ではなくても農業に興味があるとみられ、志望動機はいろいろでも農高での3年間は農業に近づくチャンスだ。農業と接する機会を得た生徒に、就農を考えるようになってもらいたい。そのためには対策が必要だ。

 アンケートでは、畜産を学ぶ生徒の卒業後の進路も調べた。就職と進学はほぼ半々。家の農業を担う自営就農は0・8%、農業法人などで働く雇用就農は3・0%で、合わせても卒業後すぐの就農は4%程度だった。生産基盤がないため、農家出身ではない生徒が卒業後すぐに自営農家になるのは難しい。多様な担い手に育ってもらうには、就職先として農業法人を選んでもらうのが一つの手だ。

 農業法人に就職してもらうには法人側の体制整備が必要だ。アンケートでは教員が「農業は低賃金で休みが取れないイメージ」との意見を寄せた。現実はそうではないと言えるだけの労働環境や待遇の水準が求められる。特に女生徒の比率が高いことから、トイレや更衣室など、女性も働きやすい職場づくりが必要だ。

 卒業後すぐにではなくても、他産業への就職や進学を経た後に新規参入や農業法人への就職・転職という手段を使って、農業の担い手になるコースもある。その道を太くすることも考えたい。

 農高在学中に、自身との相性も考えて農業の可能性に期待を膨らませる生徒がいる一方で、農業の現実を見て失望する生徒もいるかもしれない。成功している農業法人の経営者に農業の魅力と可能性を語ってもらう「出前授業」や先進農家での実習は、地域の農家の腕の見せどころになる。

 農高の3年間で農業の基本を教えることは大事である。同時に、新規参入者に用意されている助成策や、新規参入への具体的な道筋や事例を行政などが示しておけば、将来の多様な担い手確保の道が広がる。

 農高の毎年の卒業生は、全国農業高等学校長協会加盟の369校(2019年度)で、約3万人に上る。多様な形で日本の農業を支える人材に育ってくれれば、心強い味方になる。
 

おすすめ記事

論説の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは