コロナ禍と高齢者 農業支えに健康維持を

 新型コロナウイルス感染対策に伴う外出自粛で、高齢者の不安が増している。心と体の健康を保ち、前向きに過ごせるよう家族や地域の支えが必要だ。高齢者の自立機能を維持する上で農作業にも期待したい。

 緊急事態宣言は39県で解除されたものの、重症化リスクが高い高齢者は自宅に閉じこもる生活が余儀なくされ、気分がふさいでいることだろう。運動量が減り、食事が偏ることによって起きる「体の健康問題」と「心の健康問題」が危惧される。

 東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢教授は「ずっと家に閉じこもって動かずにいたり、結果的に食事を抜いてしまったり、誰ともしゃべらなかったりするとフレイル(虚弱)が進行する恐れがある」と警告。元気で活動的だった人も、何週間も家から出ない生活を続ければ要介護へ移行しかねない。

 2週間の寝たきりで失われる筋肉量が、高齢者では7年間に失われる量に匹敵するといわれる。生活が不活発な状態が続くと身体機能だけでなく、心の健康も良くない方に向かう。親類や友人と会えずに気分がめいり、誰ともコミュニケーションを取らないと知らないうちに認知症が進行する懸念もある。

 同研究機構は、新型コロナについて高齢者が気を付けたいポイントをホームページで公開。適度な運動、3食バランスの良い食事、そして会話、前向きな気持ちが欠かせないという。

 筋肉量を維持するために運動は、室内では足踏み、爪先立ち、スクワットを行い、天気の良い日は人との距離を取りながら散歩やウオーキングをする。バランスの良い食事も大事だ。肉、魚、卵、大豆製品などのタンパク質、きのこ類に多いビタミンDを十分に摂取しよう。

 一人暮らしだと、人と会ったり、おしゃべりの機会が減ったりして誰とも話さない日もある。近所の人が声を掛けてほしい。離れて住む子や孫は積極的に電話を掛け、いつも以上に話を聞いてほしい。同居の家族は、バランス良い食事を用意したり、家族で楽しくおしゃべりする機会を増やしたりしてほしい。高齢者本人には、疎遠だった知人に手紙を書くことを勧めたい。心を豊かにする。

 大切なのは前向きな気持ちだ。農業に長年携わってきた高齢者は自ら工夫し、息詰まる生活の中でも楽しみを見いだそうとしている。日本農業新聞こだま欄「女の階段」に、86歳の田中早苗さん(三重県)の投稿があった。長く荒らしていた畑を耕し、今年は花やサトイモ、コンニャクを植え、出来上がった作物を人にあげるため畑に通っているという。「食べられて、話せて、働ける、こんな幸せがありましょうか」と農業のありがたさをつづった。

 農家は多くの困難に遭いながらも前向きに人生を開拓してきた。家族や友人と再び笑顔で集う日を励みに、無理をせず、畑仕事を続けてもらいたい。

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