コロナと農村交流 自粛時こそ関わり維持

 経験したことのない全国規模の外出自粛は、田園回帰の流れや都市農村交流にどんな影響を及ぼすのか。詳細な動向調査や分析が待たれる。地方の側が呼び掛けた来訪自粛要請の副作用がこの先出ないかも心配だ。アフターケアをしておきたい。

 新型コロナウイルスの感染拡大以降、想定外の人の動きが起こった。東京などの大都市から地方、農山漁村に向かう「コロナ疎開」である。5月の大型連休を前に「今は来ないでください」と、自治体の首長が訴えたのは記憶に新しい。有名観光地にとどまらず、普段はめったに人の来ない農山漁村でも来訪自粛現象が見られた。

 これが感染防止のためという趣旨は十分理解できる。ただ、外出・移動自粛が段階的に解除され、地方との往来が自由にできるようになった暁に、呼び掛けられた人たちはすんなり地方に足を向けるものだろうか。ここは、都市農村交流への後遺症が出ないよう、アフターケアやリハビリが大事になる。

 農山漁村の活性化にとって、外から人を呼び込むのは重要な政策手法だ。温泉、農業体験、農家民宿、グリーンツーリズム、近年の訪日外国人(インバウンド)、田園回帰、半農半X、二地域居住、関係人口などさまざまある。こうした取り組みに今回の自粛が水を差してはならない。移動に制約がかかる今こそ、関わりを維持する「心の交流」を働き掛けたい。

 参考事例は多い。緊急事態宣言の下、都市と農村、生産者と消費者との間で非接触型の交流が行われてきた。成果を挙げたのは「飛騨牛」の購入型クラウドファンディング。JAや地元金融機関、企業が連携し、5月10日までの12日間で支援者1万人、1億1000万円もの資金を集めた。文化人や芸能人が呼びかけた小規模映画館の救援クラウドファンディングは1カ月で3億円超を集めて話題を呼んだ。そのサプライズが農業分野でも起き得ることを実証した形だ。

 訪問できない都市住民に農業の様子を動画で伝えるといった試みも各地で広がった。一ひねり加えたサービスを考案したのは広島県三次市の平田観光農園だ。イチゴの摘み取り作業の動画とネット販売を組み合わせた「巣ごもりいちご狩り」を始めた。帰省したくてもできない都会在住の若者を古里の味で励ます試みもあった。新潟県燕市は新潟県外の学生に米5キロと手作り布マスク1枚を贈った。同様の取り組みは富山県や新潟県長岡市、茨城県大子町などでもあり、インターネット交流サイト(SNS)で「あったかくてすてき」と話題になった。

 移動できないからと諦めてはいけない。今はSNS、動画、オンライン会議など手法に事欠かない。それは苦手という人は手書きの手紙を送れば、ネットよりもっと効果があるかもしれない。自粛中でも関わりを追求する姿勢は、解除後の交流活動に良い効果を与えるだろう。

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