[新型コロナ] 緊急事態解除も移動自粛 棚田オーナー交流したいのに… 田植え代行今後に不安 長野県上田市の団体

棚田の代かきに汗を流す久保田さん。「一日も早くコロナ禍が収束してほしい」と願う(長野県上田市で)

 新型コロナウイルスが棚田の保全に影を落としている。希望者が年会費を払い、田植えなどをして保全に関わる「棚田オーナー制度」。25日に全国で緊急事態宣言が解除されたものの県境をまたぐ移動自粛が求められる中、オーナーが棚田に足を運べない状況が続く。田植えイベントを中止した棚田では、保全委員会が作業を代行。労力や費用の負担が生じている。今後もイベントが実施できるかは不透明。長引けば都市と農村の交流、棚田維持に影響が出る恐れがある。(藤川千尋)

 「日本の棚田百選」にも選ばれた長野県上田市の稲倉の棚田では、30ヘクタールのうち8ヘクタールの棚田を、地域住民らで組織する稲倉の棚田保全委員会が管理。今年は、過去最大の約95組のオーナーを集め、31日には盛大に田植えイベントを開く予定だった。だが、オーナーの約9割が25日まで緊急事態宣言が継続されていた東京を中心とした首都圏在住者だったこともあり、イベント中止を決断した。

 急斜面に田んぼが点在する棚田の田植えは、平地よりもはるかに労力が必要だ。田植えイベントでは、昨年はオーナー約250人が棚田に集まり、大きな力となっていた。1時間ほどの作業で約3分の1の田植えが終わるという。

 例年ならオーナーが田植えをする部分も、今年は委員会のメンバーらが代行する。この他、毎年地域住民ら約100人が行う棚田での大規模な草刈りも感染拡大防止のため、中止となった。現在は委員会のメンバーが週2回、一度に約15人で草刈りに汗を流す。田植えや草刈りなどの仕事に関わる人への時給1000円の給与や人集めの負担が発生している。

 同委員会事務局長の大山慧一郎さん(34)は「棚田に来る人の安全を確保する必要があり、都道府県をまたいだ移動が可能になってもすぐに棚田に来てということにはならないだろう。稲刈りの時期には来てほしいが、感染の第2波、第3波が来る可能性もあり、今後イベントができるか先が読めない」とみる。

 同委員会委員長の久保田良和さん(71)は「実際に棚田に来てもらい、地域の人と交流してもらうことができずさみしい。コロナ禍が続けば魅力を伝える機会が減り、オーナーが離れて棚田の維持や管理に影響がでるかもしれない」と気をもむ。棚田オーナーで東京都西東京市の玉崎修平さん(44)は「現地に足を運べないのは残念だがこの状況では仕方がない。棚田のイベントで知り合った250人ほどにメールで棚田の米を購入する声掛けをした」と話す。

 同委員会は棚田に来られないオーナー向けに、稲の生育状況を撮影した写真を送る予定だ。
 

全国でイベント中止 「にぎわい戻って」


 全国の棚田でもイベント中止が相次ぐ。NPO法人棚田ネットワークが田植えなどのイベントに関わる川代棚田(千葉県鴨川市)、石部棚田(静岡県松崎町)、坂折棚田(岐阜県恵那市)、下赤阪の棚田(大阪府千早赤阪村)でも田植えイベントが中止となった。例年これら4カ所の棚田には、約200組のオーナーが訪れていたという。

 同法人の上久保郁夫理事は「オーナーは田植えや収穫作業を担うだけでなく、農村を訪れて宿泊や買い物などをして地域に貢献してきた側面もあり、オーナー制度は農村活性化の力になっていた。(ウイルスの問題が)何とか収束してまた棚田ににぎわいが戻ってほしい」と強調する。


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