緊急事態全面解除 命と暮らしの安保築け

 政府は、新型コロナウイルス対応の緊急事態宣言を全面的に解除した。しかし感染終息までの道のりは長い。感染の再拡大を防ぐには、感染防止と経済活動の拡大を両立できるよう命と暮らしの安全保障の構築が必要だ。農業の復興にもつながる。

 ウイルスは消えたわけではない。政府諮問委員会の尾身茂会長は国会で20日、「見えない感染が続いていると考えるべきだ」と指摘。政府専門家会議の脇田隆字座長は、終息の切り札とされるワクチン開発は「年を越えると思っている」と述べた。

 感染再拡大の防止で重要なのは感染者の早期の発見・隔離・治療であり、検査・医療体制の強化を急ぐ必要がある。またマスクなど防護具が不足し、輸入依存が課題に挙がる。PCR検査が増えなかった要因として、保健所の削減など公衆衛生体制の後退も指摘される。政府が進めようとしている公立・公的病院の再編・統合にも批判が高まっている。コロナ禍を教訓に医療を「命の安保」の要とし、効率化路線を転換すべきだ。

 安倍晋三首相は、事業と雇用を守り抜くと表明した。真価が問われるのはこれからだ。日本の経済成長はマイナスに落ち込み、雇用情勢も急速に悪化している。世界的にも大恐慌以来の景気後退が懸念される。

 外出・移動自粛や休業要請などの緩和・解除が広がる。第2波が発生し再び宣言が出ても、以前の状態に戻すのは容易ではないだろう。感染防止を最優先にすべきだ。それには、収入が減ったままでも事業が継続できるよう政府は経営支援を継続・拡充する必要がある。農業分野も同様だ。追加経済対策で自民党は、コロナ対策に取り組む農家への補助金の新設などを提言。政府は真摯(しんし)に受け止め、支援が必要な全ての農家に迅速に届くようにすべきだ。

 感染防止と経済活動拡大の両立では都道府県が重要な役割を担う。感染防止を第一とするよう求める。支援策では政府と自治体の役割分担が重要だ。休業補償に政府が後ろ向きな中で都道府県が協力金を設けた。農業でも、市町村を含め地域の実態に合わせた支援策を実施。ただ財政事情で格差がある。自治体向け臨時交付金の大幅な増額など十分な財政支援をすべきだ。

 失業や休業手当が支給されないなどで生活困窮者の増加が懸念される。政府は一律10万円の給付をしているが、生活困窮者には継続的な支援が必要だ。セーフティーネット(安全網)の検証と見直しも求められる。

 安倍政権が農業の成長の柱としてきた、訪日外国人(インバウンド)対応を含む輸出拡大は当面厳しいとみられる。生産基盤の維持・拡大には、国民に国産を選んでもらうことが必要だ。政権が拡大を誇ってきた景気も、多くの国民に実感がないまま悪化。食料安保確立の観点からも、全ての国民が安心して生活できるよう所得を下支えする「暮らしの安保」が重要だ。
 

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