[新型コロナ] 花き施設園芸コストの重圧 収入減に追い打ち「今が最悪」 支援あるも苦しく

ヒートポンプを通した冷暖房でランを栽培する茂木代表。新型コロナ禍で売り上げが落ち、年間5000万円以上の電気代に頭を悩ませる(埼玉県本庄市で)

 新型コロナウイルスの影響で花き農家がかつてない苦境に立たされている。中でもヒートポンプなどで電力を多用する施設栽培の農家は、電気代などのランニングコストの割合が大きく、さらに経営に重くのしかかる。産地からは次期作支援策の継続や、安価な農事用電力の適用拡大を求める声が強まっている。(木村泰之)
 

農事用電力適用を 経費面配慮して


 群馬県桐生市で切りバラ「ブロッサムピンク」など5品種を栽培する櫻井新太郎さん(38)は、年間約20万本を生産、9割を東京へ出荷する。例年なら4月は、1ケース(約30本入り)700円程度で取引される。今年は緊急事態宣言発令の翌日、4月8日に、1ケース130円という価格を経験した。

 春は花の需要が伸びる時期だが、緊急事態宣言で全国的に学校は休校に。結婚式や葬式などの需要も落ち込んだ。4月の切り花の日農平均価格(1本当たり)は過去10年で最安の40円、5月も50円と過去10年で最安値だった。

 政府は花の相場下落を受け、花き農家らが次期作に取り組む場合、高収益作物次期作支援交付金として、資材購入や機械レンタルなどを支援する。交付単価は、2次補正予算案で10アール当たり80万円に引き上げた。

 櫻井さんは「交付はありがたいが、一時的な措置にすぎない」と受け止める。ハウス3棟に9基のヒートポンプを設置し、電気代は年間400万円かかる。冬場の加温、夏場の夜冷にと温度管理が欠かせず、病害対策や梅雨時の除湿にもヒートポンプを使い、品質を保つ。電気は重油より高コストだが、櫻井さんは「相場の変動が少なく経営計画が立てやすい。地震による重油漏れといった事故の心配がないのも利点だ」と話す。

 しかしコロナ禍での価格の大幅な下落が、計画を狂わせる。交付金の申請準備をする中で「単年度でなく複数年度で対応してほしい。売り上げだけを見るのではなく、施設園芸の経費面にも配慮した支援策を求めたい」と強調する。

 約1ヘクタールで洋ラン30万鉢(単鉢換算)を生産する埼玉県本庄市のモテギ洋蘭園の茂木敏彦代表は、交付金の申請を進めながらも「熱した鉄板に水滴を垂らすくらいの金額しかない」と不安を抱く。

 18棟で48基のヒートポンプが年中稼動、電気代は年間5400万円。開店祝いなどで使われる洋ラン需要が4月は激減、同月の売り上げは1300万円減少した。今後も贈答需要が見通せず、かさむ電気代に苦慮する。

 花は1985年に関税が廃止され、2019年には約13億本の切り花が輸入された。日本花き生産協会の副会長も務める茂木代表は「花き農家は関税が撤廃されてからも、リーマン・ショックや東日本大震災でも踏みとどまってきたが、今が最悪」と打ち明ける。

 茂木代表は、花き農家が営農を継続できるよう、農事用電力の適用拡大を訴える。農事用電力は通常の電気料金より3、4割安いが、かんがい排水、脱穀調製、育苗栽培などに用途が限られる。これを期限を区切り花きへの適用を求める。

 日本で多くの農家が使う50キロワット未満の低圧電力は、東京電力では1122円の基本料金に1キロワットアワー当たり15~17円。農事用電力は基本料金440円で1キロワットアワー当たり11~13円と4割ほど安い。韓国は基本料金が約107円前後で1キロワットアワー当たり3円前後と、日本の10分の1以下だ。

 電気料金などの固定費が、経営を圧迫する状況になっている事態を受けて同県の大野元裕知事は4月下旬、政府にコロナ対策で農事用電力適用拡大を緊急要望した。

 要望に対して、経済産業省資源エネルギー庁は「電気料金の支払い猶予や持続化給付金と合わせた既存の措置を利用してほしい」(電力産業・市場室)と慎重だ。県は東電との交渉も検討する。

 専門家は、新型コロナで花き産業は大きな転換期を迎えているとみる。日本フローラルマーケティング協会(JFMA)の小川孔輔会長は「ステイホーム期間中に家庭で花を飾る人が増え、花苗も売れ、業務用から家庭用への転換が進んでいる。海外からの航空便が乏しく輸入品が少ない今こそ、家庭で購入されやすい品目や販売方法を検討してほしい。電気料金もハウスの団地化を進めれば、バイオマスなど新しい手法で削減できる手法もある」と提案する。
 

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