農政モニター調査 基盤強化し内需拡大を

 農業者らへの日本農業新聞の調査で、安倍内閣の農政を7割が評価していないことが分かった。大型自由貿易協定(メガFTA)の影響への懸念が大きい一方で、輸出振興への期待は低い。生産基盤の強化と併せて、内需拡大を望んでいることが読み取れる。政府は、生産現場の声を重く受け止めるべきだ。

 調査は本紙農政モニターを対象に4月下旬~5月上旬に実施。内閣支持率は37・5%で、昨年10月の前回調査から5・9ポイントも低下した。農政不信は根強く、むしろ強まっている。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い農業経営が厳しくなったことだけが要因ではない。メガFTAの相次ぐ発効の影響への懸念が大きい。今回の調査は、今年1月に日米貿易協定が発効してから初。環太平洋連携協定(TPP)や日欧経済連携協定(EPA)と合わせて、日本は農産物市場のかつてない開放に踏み切った。

 調査では、メガFTAの発効で国内農業にマイナスの影響があるとの回答が9割近くを占めた。影響の程度では「全体的に大きなマイナス」が全体の3割で、「部分的に大きなマイナス」が同2割近かった。関税削減など今後さらに市場開放が進むだけに農業者の不安は強い。

 農業政策では、農林水産物・食品の輸出額を2030年までに5兆円に拡大するとの政府目標を「評価しない」が半数を超えた。「19年1兆円」の目標を達成できなかったことや、新型コロナがパンデミック(世界的大流行)を引き起こしていることから疑問視されたのだろう。

 3月に閣議決定した食料・農業・農村基本計画で、規模の大小や中山間地域などの条件にかかわらず生産基盤を強化する方針を掲げたことは、6割近くが評価。規模拡大に偏重傾向だった政策からの転換を歓迎している。基本計画が、地域資源を生かした所得や雇用機会の確保などの方向性を打ち出したことも7割近くが評価した。農村政策強化への期待の表れであろう。

 日本は、市場開放を進め農産物を大量に輸入する一方で、輸出を成長戦略の柱に位置付けてきた。しかしコロナ禍で輸出もインバウンド(訪日外国人)も減少し、外需頼みの危うさが表面化。また、輸出国が自国民への供給を優先し輸出を規制する動きが出ている。こうした中、外出自粛や在宅勤務で家庭での食事が増えたこともあり、国内農業への国民の期待は高まっている。ただ、中国での新型コロナの感染拡大で同国産タマネギの輸入が滞った際、加工体制が整わず国産での供給が一部にとどまるなど、課題は多い。

 人口減少の中で輸出の推進は必要だが、内需拡大の加速も求められる。需要に対応できるよう中小農家・中山間地域を含めた生産基盤の強化と、生産と生活の場である農山村の振興も不可欠だ。農業者の声を受け止め、現場に寄り添った農政運営をすべきだ。
 

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