ふるさと納税 地場産のファン獲得を

 出身地や自分が選んだ自治体に寄付する「ふるさと納税」が、新型コロナウイルス禍で注目を集める。消費が低迷する農畜産物の生産基盤を守ろうと自治体やJA、流通業者らが連携した応援企画に市民が共感し、利用。地域貢献という制度の意義を確認し、地場産・国産のファンづくりの機会にしたい。

 ふるさと納税は、自治体に寄付すると税金が軽減される制度。寄付額のうち自己負担の2000円を除き、所得税と住民税から控除される。返礼品を地場産品に限り、調達費を寄付額の30%以下とするルールを昨年制定。それまで自治体間の寄付金争奪戦や、高額な返礼品目当ての寄付も目に付いた。地域振興につなげる制度本来の役割が見失われがちだったといえる。

 だがコロナ禍で状況は大きく変わった。「3密」回避のためイベントは中止・縮小された。外食の機会は大きく減り、インバウンド(訪日外国人)は途絶えた。農畜産物では巣ごもり需要が増える一方、高価格帯の和牛やメロン、飲食店での需要が大きいつま物類などは、提供機会の減少で価格が下落した。生産基盤の崩壊に危機感を持つ産地や自治体などが結集し、ふるさと納税での支援を呼び掛け、応援消費を求めている。寄付金の利用目的が明確で切実なだけに、市民の反応は早かった。

 JAグループは5月、ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」の運営会社と連携し、肉牛生産者の応援キャンペーンを展開。指定の牛肉などを返礼品に選ぶと、ステーキ肉が抽選で当たる。この企画に898自治体が参加し、半月間で寄付は前年同期の2倍に達した。「お肉の消費が落ち込んでいると知り、早々に申し込んだ」などの寄付者のメッセージから、共感を呼んだと分かる。支援先として国産牛に、果実と花き、酪農を加え今月は第2弾を展開中だ。

 多くのふるさと納税サイトが自治体と協力し、打撃を受けた農家ら事業者の支援プロジェクトを推進する。ふるさとチョイスでは、卒業式や結婚式などの中止で3月から著しく需要が落ち込んだ花き事業者を支えるため、返礼品に花を贈るプロジェクトなどが支持を集める。

 産地の窮状を知り、自治体への寄付と応援消費で支援する人が増え、ふるさと納税の意義への理解が広がった。コロナ禍で寄付者の利点も増した。返礼品は自治体の地域内で調達され、加えて価格が下がった農産畜物などが対象であり、寄付者の“お得感”が増す。豊かな返礼品への期待が寄付の動機の一つになることは確かで、良品を用意して寄付者の好意に応えたい。

 寄付金を産地振興にどう役立てるか。自治体は使い方を工夫し公開しよう。産地が立ち直る過程と結果を寄付者に伝える責任がある。透明性の確保が大事だ。自分の寄付が役立っているとの納得感が得られてこそ地域と産地への愛着が生まれ、継続的な購入につながるといえる。
 

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