農水省検討 放牧に畜舎設置義務 伝染病予防へ 乏しい根拠、負担増懸念

 農水省が、豚熱や口蹄疫(こうていえき)などの家畜伝染病の感染拡大防止に向け、飼養衛生管理基準の見直しを進めている。改正案で大きく見直されるのが放牧で、コストがかかる畜舎設置の義務化などが盛り込まれた。伝染病予防が理由だが、放牧が畜舎飼いより感染リスクが高いという科学的根拠はないという。鶏は対象外だ。放牧は耕作放棄地の活用や省力化で広がっており、基準の見直しに、放牧農家からは戸惑いや負担増を懸念する意見が上がっている。

 基準見直しは、7月施行の改正家畜伝染病予防法に基づくもの。基準案で豚は、野生イノシシで豚熱ウイルス陽性反応が確認された地域とその隣県を含む「大臣指定地域」では放牧中止が盛り込まれた。該当地域は現在24都府県に上る。同地域に指定されると、放牧中止の他、地域内で収穫した農産物などを飼料や敷料に使うには家畜保健衛生所の指導が必要になる。

 それ以外の地域の豚や牛、ヤギなどの放牧には、家畜伝染病発生に伴う放牧停止や制限指示があった場合に備え、畜舎の確保や出荷、移動などができるよう準備を求めており、畜舎設置や全頭移動を求めた形だ。都道府県の指導、勧告、命令を受けても守らなかった場合は、罰則が科せられる。

 基準案は同省の食料・農業・農村政策審議会家畜衛生部会牛豚等疾病小委員会の議論を経てまとめた。同省は放牧中止について科学的なデータはないとしながらも「放牧は柵をしていても鳥が空からウイルスを持ち込む可能性がある」と説明。準備が必要な畜舎は、屋根と防鳥ネットなどの簡易なものを想定する。

 同省によると、全国約4300の養豚場のうち放牧は約140農場が取り組む。牛は乳用牛で総飼養頭数の23%に当たる約30万頭、肉用牛は繁殖雌牛の17%の約11万頭が放牧で飼養されている。

 同省は現在、基準案について11日まで国民から意見を募集している。意見では、放牧養豚に取り組む農家らから、拙速な議論への戸惑いや負担増加を懸念する声が上がっている。

 同省は意見を踏まえ、今後、家畜衛生部会での議論を経て7月までに決め、豚は11月、牛などは来年10月から適用する計画だ。同省は「放牧を否定するわけではない。意見を踏まえて検討したい」とする。
 

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