コロナ後の経済 社会の利益最適化を ナチュラルアート代表 鈴木誠

鈴木誠氏

 日本での新型コロナウイルスの感染拡大は、峠を越えたかもしれない。だが、コロナによる経済不況は長きにわたる闘いとなる。新たな生活様式の中、経済規模の縮小は免れない。日本は、国内総生産(GDP)がマイナス20%、100兆円という莫大なマーケットが吹き飛ぶ恐れがある。一過性の疫病や不況への対策ではなく、明治維新や第2次世界大戦に匹敵する抜本的な意識改革と構造改革が求められる。

 そもそも、世界では人口爆発や温暖化といった環境問題、行き過ぎた資本主義による社会の二極化などから、構造改革は不可避の状況だった。国連が示す持続可能な開発目標(SDGs)という、新たな社会概念が生まれたのもそのためだ。
 

食料問題議論を


 コロナショックは、世界に食料問題の重要性を再認識させた。各国は、食料自給力を高め、また食料の輸出規制に動いている。それに比べ、日本は食料問題への取り組みも議論も足りない。食料自給力や食料安全保障は、既に危険水域に入っているにもかかわらずだ。官民挙げて、1次産業革命に取り組むラストチャンスと認識すべきだ。

 現代は、情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)を中心に第4次産業革命のさなかと言われる。今後、食料問題を中心にした第5次産業革命へ移行すべきだ。食料問題も、抜本的な創造的破壊を進めなければ、日本も世界もいずれ破綻する。食料は社会の礎であり、裾野の広い産業として成長性がある。
 

「縦割り」見直せ


 コロナ感染対策では、日本特有の縦割りの弊害が散見された。1次産業および関連産業も、同様の問題を抱えている。日本で食料パニックが起きないのは、食のサプライチェーンに関わる方々の献身的な努力のたまものだが、その食産業の構造は決して盤石ではない。産業強化には、1次産業から流通・物流・加工などまでサプライチェーンを一体化し、縦割りを超えた構造改革が不可欠だ。

 これまで「錦の御旗」に思えた過剰な競争原理も、見直すべき時期に来ている。個々の企業や団体の利益優先ではなく、社会の利益を最適化しなければならない。利益を奪い合うゼロサムゲームではなく、産業全体で付加価値を拡大し、利益を共有する。それが長期的に見れば、結果として個々の利益にも直結することになる。そのためには、縦横斜めとさまざまな壁を取り払った、合従連衡型モデルの構築が重要になる。

 過剰な東京一極集中という構造的問題も露呈した。人材が地方移転を進め、1次産業および関連産業が活性化すれば地方が活性化し、食料自給力や食料安全保障が強化され、輸出や海外進出も拡大する好循環を期待したい。それは日本人に、より豊かで幸せな古き良き社会をもたらす。

 政府の補償も重要だが、その効果は短期的で限定的だ。長期的に持続可能な社会を構築するには、われわれ自身の努力による構造改革と1次産業革命が必要になる。

 すずき・まこと 1966年青森市生まれ。慶応義塾大学卒、東洋信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)を経て、慶大大学院でMBA取得。2003年に(株)ナチュラルアート設立。著書に『脱サラ農業で年商110億円!元銀行マンの挑戦』など。

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