全中会長選 立候補者所信

 JA全中が18日に開いた次期会長候補者による所信説明会で、JA徳島中央会会長の中西庄次郎氏と、JA和歌山中央会会長の中家徹氏=五十音順=の2人が発言した主な内容は次の通り。
 

JA徳島中央会会長 中西庄次郎氏

 
中西庄次郎氏
 
 新型コロナウイルスにより畜産・酪農・花き・果実が非常に厳しい状況になっている。多くの農家の皆さんに心よりお見舞い申し上げる。命懸けで医療活動に励んでいる全国の厚生連の病院の先生、看護師、スタッフの皆さんに深く感謝と敬意を表する。JAグループとしてしっかりと支援したいと思っているので頑張ってほしい。

 農業、JAを取り巻く内外の環境、情勢は大きく変わり、農業、JA経営は大変厳しい状況だ。JAグループは変化に機敏に対応し、危機を乗り越えていかなければならない。日本農業の再興とにぎわいある地域社会のために、どこよりも汗をかかなければならない。そのためにも全中には現状突破の旗を高々と掲げる責務がある。その旗を力の限り振り、風を起こすべく立候補を決意した。

 「常に何事にも挑戦と改革、尽きることなし」。私の行動の原点であり、揺るがぬ信念だ。これからの3年間、積極果敢な挑戦により、JAの存在価値のさらなる向上と農業所得の増大、豊かな地域社会の実現に取り組んでいく。そのために私は農業、JA再興に向けて三つの風を吹かしていく。

 第1の風は「農業に国民世論の風を吹かす」だ。JAグループは国民の皆さまの食卓に、安全で安心な農畜水産物を子どもや孫の代まで安定的に届ける使命がある。そのためには国民の皆さまに今一度、食の大切さ、生産者の苦労、収穫の喜びを訴えて、農業の現状や課題についてさらなる理解を得る必要がある。

 新たな食料・農業・農村基本計画ができた。力強い日本農業の実現、食料安全保障、食料自給率向上について、国民的課題として認識してもらう必要がある。我々が言い続けてきた日本農業を支えてきた中山間地域や家族農業の重要さが基本計画に盛り込まれた。全国津々浦々の中山間地域によって国土と環境と古里が保たれてきた。そこを守っていかなければ地方は元気にならない。今後、10年間の取り組みにわが国の食と農業と農村の将来が懸かっている。

 新型コロナ拡大により、多数の海外諸国が食料の輸出を止めた。国民の心には自給率37%の日本が本当に国民の食料を賄うことができるのか、大きな不安が生じた。日本農業を再興するためにはJAグループの力だけではなく、広く産官学の上に林業、漁業、生協、医療、消費者団体が一体となって考える場所が必要だ。各界各層の参画を得て「協同の輪フォーラム」を設立し、農業や食料問題、食料供給について議論を進めたい。あらゆる業界が一体となり国産の農畜水産物愛用運動を含め、広く国民的運動として展開していく。日本全体で農業を盛り上げていく、攻めの広報運動に取り組む。

 次に「農協改革に現場の風を吹かす」。これが第2の風だ。全国584JAの声を全国組織に送り込み、事業運営に反映させる。全国のJAで規模を問わず自己改革を実践し、先進的な取り組みをしている代表者に集まってもらう場をつくる。率直な意見、批判も含めて提言や要望をもらいたい。

 例えば長野県のJA上伊那では他業態との連携によるインショップを展開し、幅広く組合員のニーズに対応できる業態を構築している。JA兵庫みらいでは施設アスパラガスの産地化に向け5ヘクタールで1億円を目標にJAの職員自ら、研究・普及を進めている。JA岩手ふるさと、静岡県のJAしみず、長崎県のJAながさき県央、鹿児島県のJAあいらなど、その他にも多くのJAで汗を流し、特色ある自己改革を実践している。全国各地のJAの英知、ノウハウ、アイデア、人材を集積し共有できる場を設け、自己改革実践へのエネルギーとしていく。JA経営は今後、信用共済事業の一層の減収・減益が現実的となってくる。営農経済事業によって農業経営と組合員対策を強化しなければ、JAとしての役割を発揮できない。第一線の現場で苦労している全国のJAの皆さんの声に耳を傾け、改革を着実に前進させていきたい。

 第3の風が「農協組織に刷新の風を吹かす」だ。このたび全中を皮切りに全国連組織の役員定年の年齢が引き上げられた。全中の理事会においても納得する説明もなく不透明感が残っている。いま一度、全国のJAから幅広い声を聞き、ゼロベースで丁寧かつ慎重に審議する場を設ける。次の世代を担う有為の人材に広く門戸を開き、JA組織が常に刷新される道筋を示していく。全中のガバナンスも見直していく。有能で、もっと改革を前に進めたいという職員も数多くいる。積極的な登用や役員、理事の選出方法の見直し、外部有識者の活用も含めて新しい執行体制の確立に取り組んでいく。

 一方、准組合員の問題は、与党公約で組合員の判断によるとされた。准組合員も地域のパートナーであるとの位置付けを丁寧に説明するとともに、協同組合の在り方や意義についても認識を広げ、政府・与党の理解を得て、事業利用規制を阻止する。

 農業農村、JAは多くの課題を抱えている。584のJA、系統組織一体の新たな発想、工夫を取り入れた挑戦が地方を元気にしていく。そういう風を起こすことが私に課せられた使命だ。以上、三つの風を農業とJAに吹き込む。

 全中は変化しなければならない。このままではますます求心力は低下する。全中は改革の最前線に立って全力で旗を振らなければならない。現場の第一線で活躍している584のJAの皆さんも一緒になって風を巻き起こし前へ前へ進もう。3年間、全身全霊で全中運営に当たる覚悟だ。
 

JA和歌山中央会会長 中家徹氏

 
中家徹氏
 
 私は、和歌山の果樹農家に生まれ、中央協同組合学園の1期生として入学した。農協運動を学び、地元の紀南農協に入組した。現場の実践を踏まえ3年前から全中の事業、組織運営に当たっている。

 JAグループを挙げて自己改革に取り組み、その成果を基に、政府・与党に働き掛けを続けてきた。農協改革集中推進期間は終了し、准組合員の事業利用制限について「組合員の声を重視する」との旨が与党の公約となった。農協法5年後検討条項の期限を来春に控え、この1年は「今後のJAグループの浮沈を決する」と言っても過言ではなく、自己改革や対話運動などの成果が問われる集大成として、准組合員の事業利用の制限阻止をやり遂げる必要がある。規制改革推進会議は、農協改革について依然、課題は残されているとの認識の下、今月末には実施計画をまとめる予定と聞いており、予断を許さない状況にある。

 近年、相次ぐ自然災害に加え、新型コロナによる影響が計り知れない中で、食料・農業・農村基本計画の実践、JA経営基盤の確立・強化など、従来からの重要課題への対応を遅滞なく果たしていくことが極めて難しくなっている。

 こうした状況を乗り越え、農業・JAの未来を拓くには、協同組合として、組合員や組織が結集することが何より大切であり、農協人として半世紀、全中会長として3年の間に培ってきたもの全てを投入し、協同の力の一層の結集に役割を果たそうと、再度、立候補を決意した。

 重要課題への対応として、7点挙げたい。

 まず第一は、不断の自己改革と准組合員の事業利用制限阻止だ。JAが組合員・地域住民になくてはならない組織であり続けるために、不断の自己改革を進めることが不可欠だ。自主自立の協同組合として、より一層、正・准組合員との関係を強化し、理解・評価を得ることで、准組合員の事業利用制限を阻止していく。

 2点目は、食料安全保障の確立と食料・農業・農村基本計画の実践だ。農水省・企画部会委員としての対応など、政府・与党に働き掛けをし、新たな基本計画では、産業政策偏重から脱却し、食料安全保障を柱に、中小・家族経営や地域政策等への支援強化を打ち出すことができた。基本計画の実践こそが、食料、農業、地域の行く末を左右する。基本計画に掲げた目標などを前倒しして達成できるよう、政策提言の策定・働き掛けなどを進める。

 さまざまな関係団体、行政、事業者、消費者等への働き掛けや連携強化に取り組むとともに、消費者や経済界、自治体関係者なども対象に広報展開を進めてきた。今後も連携や理解の輪を広げ、食料安全保障の確立を進めていく。

 3点目は、国民理解の醸成だ。改めて農業・農村を支えたいと思ってもらえる国民を一人でも増やすための世論喚起を続けていく。あらゆる機会に、農業・農村の現状や価値、それを支えるJAについて、情報発信し続けなければならない。

 4点目は、新型コロナウイルスへの対応だ。これまで政府・与党に強く働き掛け、さまざまな対策を確保してもらった。JAグループとしても、消費拡大や厚生連病院への募金などを進めている。現場の要望把握に注力し、対策の活用推進や支援と共に、柔軟かつ機動的な追加対策の確保など、万全の取り組みを進めていく。

 コロナ禍を教訓に、過度な国際化、自由化、一極集中の見直しの契機となっている。国民が必要とし消費するものはその国で産出する「国消国産」や、地方分散型社会への機運が高まっており、国民運動につなげていく。

 5点目は、JA経営基盤の確立・強化だ。JAが地域の農業と暮らしを支え続けるため、持続可能な経営基盤の確立は不可欠だ。最も大切なことは、組合員との徹底した対話により理解・協力を得ることだ。デジタル技術の活用により業務・システムの統一化などを進め、業務効率化とコスト削減、事業・活動の改善を図り、経営健全性の確保や組合員とのつながり強化なども進めていく。全国連の一体的運営や役割分担明確化など、必要な対応を進めていく。

 6点目は、地域活性化と人材育成だ。JAの強みは総合事業体としての機能発揮だ。地域の活性化や生活インフラ機能の発揮などにも貢献していく。私のJAでは、Aコープ、SSの運営に加え、移動購買車の運行などに取り組んでいる。JAの存在価値を一層高めていくことで、総合事業経営の仕組みを堅持していく。JAのもう一つの強みは組織基盤で、その源泉は組合員にある。協同組合理念を理解し、組合員と共に自ら考え、行動する、次世代に協同組合運動を引き継ぐことができる人づくり・人材育成を加速していく。

 7点目に、全中の不断の改革だ。近年、全JAの組合長などを対象に地区別で会議を開き、会員から声をもらっており、その声を真摯(しんし)に受け止め、改革を行っていく。例えば先般、この会議であった発議に基づき、全中も含めた全国連会長の定年延長の検討を開始し、組織的な協議を重ね、賛同を得て、延長という改革をした。引き続き、会員ひいては組合員の願いを実現するための組織であるよう、不断の改革を進めていく。

 恩師である元全中会長の宮脇朝男氏は「全中会長は最前線で翻っている軍旗である」という言葉を残した。この言葉をかみ締め、農協運動に半世紀携わってきた集大成として、粉骨砕身取り組む。
 

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