世界規模で気候変動リスク増 食料安保の対策急務 マッキンゼー・アンド・カンパニー 山田氏に聞く

山田氏
 気候変動による台風や干ばつなどの被害が多発し、食料安保を巡る対策が急務となっている。世界規模でコンサルティングを提供するマッキンゼー・アンド・カンパニーのシンクタンク部門の報告書からも、その実態がうかがえる。同社サスティナビリティ研究グループでアジアリーダーを務める山田唯人氏に食料問題に絞って現状や対策を聞いた。(聞き手=金哲珠)
 

収穫減の確率 30年後は4倍


 ──気候変動の現状をどう見ますか。

 気候変動を理解する上では、「カーボンバジェット(CB=炭素予算)」を考慮する必要がある。CBとは、人間活動を原因とした気候変動による気温上昇を、工業化以前の時代(1850~1900年)の水準を大きく超えないようにするために設ける、温室効果ガスの累積排出量の上限値を指す。

 調査では、気温上昇を工業化以前に比べ1・5度程度の幅に抑えるために累積できるCBは、5000億~6000億トン残っている。現在、世界規模で毎年500億トンが蓄積され、このままだとあと10~15年で残余CBを使い切ってしまい、気候変動は加速する。

 ──気候変動は、食料生産にどう影響しますか。

 気候変動は、猛暑や台風、洪水、干ばつなどの強度、頻度を高める。日本の台風の状況を見ると、2050年までに静岡を含む東日本で50年に一度の豪雨による洪水が発生する確率は、現在の3、4倍に増える。

 気候変動で世界の穀物の収穫量が15%以上減る確率は、現在を1だとすると、30年には2倍、50年には4倍に高まる。収穫量が10%以上減少する確率も同様の傾向だ。気温上昇とともに、確率はさらに上がるだろう。
 
 

生産国が集中 自国の強化を


 ただ国・地域によっては、穀物の増産もあれば減産もある。例えば、トウモロコシ。米国では、豪雨や台風の頻発で、収量が10%以上減る確率は、現在の23%から、30年の30%、50年の49%に高まる。

 一方、中国の場合、寒さが厳しかった北部では、気温上昇で生産量が増える。そのため、収穫量が10%以上減る確率は、現在の11%から、50年には8%に下がる。

 ──食料産地が集中していますね。

 それが大きなリスクだ。産地が偏り、これらの国・地域で気候変動による被害が発生すると、世界全体に響く。15~17年の生産量を見ても、産地が特定の地域に集中していることが分かる。大豆は米国など4カ国が世界の8割、トウモロコシは中国など4カ国が7割を占める。米、小麦など主要穀物も似たような状況だ。リスクを分散するためには自国の生産基盤を強化する必要がある。

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