“農高生の甲子園” 中止 夢見た優勝、開催なら3密…納得、前向く でも、悔しい 県立静岡農高

「あと193日」から進まないカウントダウンを見つめる八木さん(静岡市で)

 「しょうがない、でも悔しい」。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、10月に予定されていた「農高生の甲子園」とも言われる日本学校農業クラブ全国大会の中止が決まった。主催県だった静岡県では、1年前から準備を進めていた。生徒たちにはやり場のない思いが残る。農業高校の校舎には、開催までをカウントダウンしていたボードが「あと193日」で止まったまま、ぽつんと置かれていた。(木村薫)
 

1年前から準備 見守る教諭 「ごめん」


 「ここまでやってきて大変だった。何とかやり切りたかった」。全国大会の事務局で生徒実行委員長を務める静岡県立静岡農業高校3年の八木花梨さん(17)は悔しさをにじませる。

 同大会は10月21、22日に開く予定で、70周年の記念大会でもあった。中止は史上初。2日間で九つのプログラムの実施を予定していた。同大会は会場運営や準備は生徒が中心で行う。県内11校の農業高校の生徒代表らが意見を出し合い、準備を進めてきた。
   八木さんが中止を知ったのは5月上旬。休校中のことだった。事務局の生徒らでつくる、無料通信アプリ「LINE(ライン)」のグループに突然メッセージが届いた。

 「大会中止になるらしいよ」

 大会まではまだ数カ月ある。「生徒の間のうわさかもしれないと、信じられない気持ちだった」と振り返る。

 その数日後、学校から電話がかかってきた。運営などの指導を受け、共に準備してきた滝宏行教諭からだった。電話口から聞こえた第一声は「ごめんなさい」。謝罪の言葉だった。

 同大会に多くの人が集まり、感染リスクが高くなることも想像できた。八木さんは「本当に中止なんだという気持ちだった。でも、しょうがないと納得した」。生徒が準備する姿を間近で見てきた滝教諭にとっても、「中止は断腸の思い」だった。

 
四角いコースター(中央右)など、準備を進めていた記念品
 既に大会ポスターやホームページはできていた。来場者への“おもてなし”になる記念品の内容などを出し合っていた。

 「これ、気に入っていたんです」。八木さんは記念品の候補で、県立天竜高校の生徒が作った四角いコースターを手に取る。コースターには富士山とガーベラ、「2020in静岡」の文字が彫られていた。

 中止は決まったが、開催への思いは募る。大会全般を管理する櫻井正剛教諭は「一部だけでもできないか調整をしているが、難しい」と話す。
 

地域のため研究 商品化 「諦めない」

 
培地を見ながら櫻井教諭(右から3人目)と研究を進める兵庫さん(右)、笹本さん(同2人目)、塚本さん(いずれも静岡市で)
 大会の中止で、プロジェクト発表もできなくなった。生徒たちにとってはこれも大きな心残りだ。プロジェクト発表は大会の「花形」。生産・流通や商品開発、食文化の継承など大きく3分野に分かれ、分野ごとに研究内容を競い、日本一を決める。全国大会には各分野9チーム、計27チームしか出場できない狭き門だけに、晴れの舞台となる。

 昨年度県大会を突破し、関東ブロック大会まで進んだ静岡農高3年生の「松葉班」も全国大会を大きな目標の一つとして研究を進めてきた。今年は、県大会突破と全国大会での優勝を夢見てきた。

 「自分の県で開かれる全国大会に出場して最優秀賞を取りたかった」。同班の兵庫未桜さん(18)、笹本結妃さん(17)、塚本悠里香さん(17)は口をそろえる。

 同校は世界遺産の「三保松原」を保全する研究をしてきた。3人は松葉から乳酸菌の優良株を分離し、能力を高めて特産品作りにつなげる研究をする。2年生の時に乳酸菌を分離する基礎研究を行い、3年生の今年、製品作りを完成させて発表に臨む予定だった。

 全国大会以外にも例年なら発表機会はあるが、今年はコロナ禍で開催が見通せない。それでも研究は、前向きに続けている。「研究はもともと地域のための活動。地域との関わりをつなぐものにしたい」と兵庫さん。塚本さんは「商品化することが目標。成果をしっかり残したい」。笹本さんも「大会がなくても、研究結果は残すことができる」と前を向く。培養した乳酸菌はパンに使い、製品化する予定だ。
 

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