自治体が関係人口“増加作戦” つながり感じて 「村民票」アプリ登録1000人 高まる住民意識 岡山県西粟倉村

「関係人口」創出へ、情報発信する岡山県西粟倉村の専用アプリ(同村で)

 住民以外が地域と関わる「関係人口」の創出へ、地方自治体が地域と人をつなぐ取り組みに力を入れている。専用アプリを開発した自治体は、地域の魅力をタイムリーに情報発信し、人を呼び込むきっかけをつくる。ふるさと住民カードを自治体が発行する「ふるさと住民票」は、4年間で全国10自治体に広まった。地元住民や移住者に加え、地域を守る“第3の担い手”となる「関係人口」の拡大に奮闘する。(鈴木薫子・松村直明)

 岡山県西粟倉村は、「関係人口」づくりに特化した全国初のスマートフォン用アプリ「西粟倉アプリ村民票」の運用を昨年3月に始めた。村内の道の駅などで登録を呼び掛け、約1年で、村の人口1450人に迫る約1000人が登録した。

 村と地元コンサルティング会社が共同開発したアプリには、移住者の生活紹介「ニシアワ人」や、事業者の求人情報を集めた「村づくり&仕事」、村内の景色などを動画で紹介する「村なう」など9項目を掲載。スマホがあれば気軽に見られるアプリの強みを生かし、情報を途切れず更新する。

 どこにいても村を感じ、村民意識を高めてもらうことで、登録者の現地視察ワークへの参加に結び付いた例もある。

 村内の道の駅には年間40万~45万人が訪れるなど、観光に来る「交流人口」が多い。「交流人口」から継続して村に関わる「関係人口」へ引き上げようと、同村産業観光課の萩原勇一課長は「他拠点での仕事や生活を考える機会にしてもらい、密に関わって、共に村づくりができる関係を築きたい」と強調する。

 登録者情報を蓄積することで、「関係人口」を“見える化”し、地域経営の仕組み作りにも生かす。年代や居住地域の傾向から、PR方法を考えていく。アプリ登録者に与える2次元コード(QRコード)式の認定証の活用も検討する。
 

ふるさと住民票 8道県10市町村に


 2016年に始まった「ふるさと住民票」は、19年4月に茨城県行方市、同年7月に鹿児島県志布志市が導入し、今は8道県10市町村に増えた。出身者やふるさと納税の寄付者ら希望者を対象に、自治体が住民カードを発行。地域情報の提供、祭りや伝統行事の紹介、住民投票への参加など制度内容に地域特色を出す。

 先駆けて16年に始めた鳥取県日野町。人口は約3300人で最盛期の4割以下だ。一方、ふるさと住民登録者は20年4月現在で前年同期比100人増の470人と、人口の14%に当たる。交流会を年2回開き、同町企画政策課は「強い関係性ができた人もいる」と話す。
 

コロナ禍でも継続 ゆかりの人に“仕送り”


 新型コロナウイルスの影響で都会と農村の行き来が難しくなっている中、関係人口を増やすための動きが広がっている。

 自治体が帰省できない学生や若者に米や野菜など農産品を“仕送り”として送る事業も全国に広がる。佐賀県江北町は出身学生だけでなく、関係人口を育みたいと考え、町にゆかりのある人にもマスクや米を送っている。同町の山田恭輔町長は「これまで続けてきた関係人口とのつながりを保ちながら、共にコロナ禍の苦境を乗り越えてきたい」と考えを明かす。
 

ビジョン明確に

 

持続可能な地域社会総合研究所の藤山浩所長の話


 農村では「定住人口」が一気に増えないため、「交流人口」や「関係人口」を創出する流れになってきた。しかし、どんどん目移りし、「やっている感」だけを出すだけでは意味がない。地域全体が持続可能なビジョンを持つべきだ。

 その場限りで不特定多数に対して呼び掛けるビジネスモデルは終わった。対象を絞り、連続性を意識した対策が必要となっている。新型コロナウイルスの感染拡大の影響など、予測不可能な事態でもつながっていられる深い関係性が求められる。“量”より“質”を意識した運営が大切だ。
 

おすすめ記事

新型コロナの新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは