気候危機宣言 「社会変革」あなたから

 2020年版「環境白書」は、政府の公式文書で初めて「気候危機」という言葉を使った。従来の「気候変動」から踏み込み、強い危機感をにじませた。白書は「循環共生社会」に向け、産業や暮らしの見直しを通じ社会変革を呼び掛けた。“コロナ後”の社会も見据え、意識と行動を変えていこう。

 白書を受け、小泉進次郎環境相は「気候危機宣言」を出し、国民に危機感の共有を呼び掛けた。こうした宣言は、「気候非常事態宣言」などの名称で世界の都市を中心に広がり、国際的潮流となっている。4月時点で28カ国の約1500自治体などに、日本でも3月時点で長崎県壱岐市など15自治体に上る。

 地球温暖化が一因とされる大規模気象災害の多発、生物多様性の衰退などは、今や人類共通の課題といえる。白書は「もはや単なる『気候変動』ではなく、私たち人類や全ての生き物にとっての生存基盤を揺るがす『気候危機』」と明記。これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄の社会システムを見直し、「環境、経済、社会を統合的に向上」させる社会変革が必要だとしている。

 その上で、目指す社会像として「循環共生型の社会(環境・生命文明社会)」を掲げた。政府は、コロナ禍の今こそ、こうした持続可能な社会モデルを構想し、国家目標に位置付けるべきだ。

 政府は、温室効果ガスの削減に向け「脱炭素社会」の実現をうたう。だが、二酸化炭素(CO2)削減に逆行するとして国際的に非難を浴びている火力発電について、白書は「依存度を可能な限り引き下げる」と及び腰だ。これでは国際的な理解は得られまい。

 白書が強調するのが「1人1人から始まる社会変革」だ。温室効果ガス排出量の6割が衣食住に起因することを紹介。具体例を示しながらライフスタイルの見直しを迫っている。特に「食」の分野では、地産地消、食品ロスの削減、有機食品の選択などにより、環境負荷を減らすよう促す。こうした食を通じた取り組みが、里山や里海の保全・再生につながり、「地域循環共生圏」の創造に寄与するとしている。食卓の向こうに、農山漁村を思い描くことが、その一歩になるだろう。

 白書は、新型コロナウイルスと環境の関連性にも言及。現状では、経済社会活動の停滞で温室効果ガスは急減しているが、一時的なものに過ぎず楽観はできない。一方で、感染症拡大防止対策としてこの間、テレワークやオンライン教育、ウエブ会議などが急速に進展し、移動に伴うCO2削減効果をもたらしていると評価する。

 白書は、コロナ後を見据えて「持続可能で自立分散型の強靭(きょうじん)な経済社会づくり」を提唱する。重要な視点である。気候や疫病リスクを織り込みながら、働き方、暮らし方の見直しを進めよう。

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